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第2098話

「じゃあ今回は弟の身体を貸してあげるよ。ただし、外でやるわけにはいかないから一度ヴァルハラに戻ってからね。亜空切断しても家は元のところにあるんでしょ、確か?」 「うん、あるはずよ。じゃあいえにかえったら、あかいお兄ちゃんのからだかしてね」 「いいよ。その時は嫌っていうくらい可愛がってあげるね」 「そ、そんな……」  勝手に決められ、アクセルは大いに動揺した。  身体を貸す覚悟もできていないし、ましてやメリナの「大人の遊び」に使われるなんて冗談じゃなかった。 「兄上……」  制止するように兄の腕を掴んだのだが、兄は怪しい笑みを貼り付けながらこう言うだけだった。 「大丈夫だから。お兄ちゃんに任せて」 「でも……」 「不安なのはわかるけど、お前は今まで何度も危ないところを乗り越えてきたんだ。ヴァルキリーに棺ごと攫われた時も、ちゃんと帰ってこられたでしょ。だから大丈夫、何とかなる。万が一何とかならなくても、私が何とかしてあげる」 「うう……」 「だからお前も、ヴァルハラに戻るまでに腹を括りなさい。いいね?」 「……はい、兄上」  強引に言いくるめられ、仕方なくアクセルは頷いた。頷くしかなかった。  悶々としたままピピの背中に乗り、透ノ国を抜け出す。兄の後ろに跨っている時も、やはり不安は消えなかった。いくら腹を括れと言われても、兄のように図太くいられそうになかった。 「……なあ、兄上」  後ろから兄を抱き締めながら、呟くように言う。 「俺、兄上のこと信じてる……。兄上のことだから、きっと上手くやってくれるだろうってこともわかってる……。でもやっぱり不安だから……なるべく手短に済ませてくれよな……」 「わかってるさ。私だって、中身がお前じゃない相手とやるのは本意じゃないもの。さっさと片付けて、本物のお前とイチャイチャするよ」  そう言ってもらえて、ほんの少しだけ不安な気持ちが薄まった。  兄がそこまで言うなら仕方がない。他に方法もないし、自分も覚悟を決めよう。兄ならきっと上手くやってくれるだろう。

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