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第2120話

 兄は小さく頷いた。 「そう、いろんな世界を切り取って透ノ国に繋げるのは、高位の神様じゃないとできないってことさ。残念だけど、バルドル様は思いっきり当てはまっちゃうね」 「そう、だよな……」  バルドルは最高神オーディンの愛息子で、光の神としても有名である。その弟・ホズも、高位の神とみなしていいだろう。  これが「ランクの低い神」だったらすぐに容疑者から外せるのに、余計に容疑を深めることになってしまったようだ……。 「他にもいろいろわかったことはあるけどね。ここでは説明しきれないから、とりあえずまとめたものだけ持って行くことにするよ」  と、兄がレポート用紙の束を脇に抱える。 「じゃ、採掘場に行こうか」 「あ、ああ……。じゃあその前に本を片付けて」 「それはそのままにしておこう。どうせ図書館なんて誰も来ないし、この手の本を借りる人もいないからね。困る人もいないでしょ」 「……そういう問題なのか? 自分で散らかしたものは片付けて帰るのがマナーなんじゃ」 「まだ使う可能性があるから、このままでいいの。後でいろいろ調べ物したくなった時、本を集め直すの面倒でしょ」 「う、うん……」 「ほら、早く行くよ。やるべきことはたくさんあるんだからね」  強引に言いくるめられ、アクセルは仕方なく図書館を後にした。  兄と一緒に採掘場に向かい、目的の鉱石を探す。ついでに使えそうな玉鋼も採掘し、腰の麻袋に詰め込んだ。 「……で、これを鍛冶屋に持って行けばいいんだね?」 「ああ、そうだな」  早速ヴァルハラに戻り、いつもの鍛冶屋に足を運んでみる。  以前はたくさんの武器が預けられていて非常に混雑していたけど、ここしばらくは仕事も少なくて空いているみたいだった。やはり死合いが行われていないのは大きいのかもしれない。 「ああ、転移石ですか。それならすぐできますので、外でちょっとトレーニングでもしてお待ちください」  そんなことを言われたので、アクセルは鍛冶屋の外で素振りしながら待つことにした。

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