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第2121話

 無心でぶんぶん小太刀を振っていると、 「早く死合いがしたいなぁ」  と、兄がしみじみ言葉を発した。  ハッとして兄を見たら、兄はにこやかにこんなことを言い出した。 「なんかここしばらく、死合いらしい死合いをやっていない気がしてね。後先考えず目の前の相手にだけ集中して、その場限りの戦いを愉しむ……。戦士として、そういう娯楽はやっぱり大事だよね」 「そうだな……。俺もしばらく死合いに出てないから、あのギリギリの攻防戦が懐かしくなってきた」 「魔剣士たちのせいで、死合いそのものもめちゃくちゃになっちゃったからね。彼らさえいなければ、今も楽しい死合いができていただろうに……残念だなぁ」 「そういや、魔剣士たちって今どうしてるんだろうな? ある程度は始末できたと思うんだが、あれから音沙汰ないよな」 「うーん……言われてみれば。誰か彼らの動向をチェックしてる人、いたっけ?」 「……いや、さすがにそれは。でも、魔力の供給源は破壊できたんだから、そこまで気にしなくて大丈夫な気がするぞ」  魔剣士は、与えられた魔法で無双していただけの素人である。  魔法がなくなれば何もできず、メンタルもフィジカルも普通の戦士の足元にも及ばない。だから放っておいても大した脅威にはなるまい。 「そうそう、その魔力の供給源。お前、採掘場の地下にあった結晶の大樹を破壊したって言ってたよね?」  兄が三つ折りにしたレポート用紙を懐から取り出す。先程図書館で調べ物をした結果がいろいろ記載されているメモだ。 「さっき見つけたんだけど、魔力の源ってのはそこが消失したり壊れたりすると、明らかに気配でわかるんだって。なんかこう……空気が変わるというか、遠くで何かが起きたなっていうのが、ビビッと伝わってくるらしいよ。お前、そういうの感じた?」 「え? ええと、それは……」  感じたような、感じなかったような……。  正直あの時の感覚は、突然現れた結晶のカメに困惑していたせいでよく覚えていないのだ。

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