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第2123話

「それでいいよ。バルドル様との関係は、お前の方が深いんだ。疑いたくない気持ちもわかる。その分私がいろいろ注視しておくから、お前はお前の思うようにやりなさい」 「はい、兄上……」  兄が側にいてくれることのありがたみを、ひしひしと感じる。兄なら自分が暴走しても、きっと上手い具合に止めたり諭したりしてくれるだろう。  とりあえず俺は俺のできることをやっていかなくては……。  アクセルは転移石を握り締め、透ノ国に繋がる爪痕に向かった。  荒野を抉るような大渓谷は相変わらず深く、縁に立つといつも足が竦む。今まで何度も透ノ国に行ってはいるものの、ここから飛び降りなければならないのはやはり心臓に悪かった。 「ほら、早く行くよ。カメくんを助けたいんだろう?」  もたもたしているアクセルに、兄が手を差し伸べてくる。  兄はいつもと変わらない表情で、恐怖など微塵も感じていないように見えた。毎度のことながら、兄の胆力には恐れ入る。  アクセルは兄の手を取り、縋りつくように握り返した。そして兄に引っ張られるように一緒に爪痕にダイブした。  落下による空気が全身を叩き、周りも暗くなって落ちているかどうかもわからなくなってきたところで、ようやく透ノ国に着いた。  今回も無事に辿り着けたようで、とりあえずホッとした。転移石も落とさずしっかり持っている。 「よしよし、じゃあカメくんを捜そうか」  兄が探索し始めたので、アクセルもそれに続いた。  ひとまず自分たちの家を目指そうということになり、落ちたところからいくつかワープを経由して様々な場所を渡り歩いた。砂だらけの砂漠地帯、ジメッとしたジャングル、ケイジの故郷らしき東洋の国っぽい場所もあった。本当に透ノ国は、ミステリアスすぎてわけがわからない。  ――せめて、このワープの法則さえわかればな……。そうすれば、思った通りの場所に行けるのに。  法則性があるのかどうかもわからない。いつかじっくり調べてみたいが、今はそんな余裕もなさそうだ。まったく、面倒臭くて敵わない……。

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