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第2128話
――いや、そんなことない!
ネガティブな考えを振り払うように、アクセルは自分の頬を叩いた。
兄がそう簡単に死ぬはずがない。自分より遥かに強いし用心深いのだから。
兄のことだから瓦礫が落ち始めたところですぐに退避し、自分の安全を確保したに違いない。今はきっと瓦礫を取り除く応援を呼んでいるところなのだろう。
そう自分に言い聞かせ、アクセルは前を向いた。今は自分にできることをしなくては。
ヤドリギの蔓を辿り、階段を下りていく。
階段自体はさほど深くなく、一〇メートルほど進んだところで壁にぶち当たった。
――どうせここも扉か何かなんだろ。
試しに片腕でぐっ……と押してみたら、いとも簡単に扉が開いた。魔法の類いはかかっていなさそうだったので、少しホッとした。
そっと扉を薄く開け、中の様子を窺う。地下にあるせいか光が届かず、だいぶ薄暗くなっていた。
それでも誰かがいる気配はなかったので、目を凝らしながら進んで行くと、
「ん……?」
部屋の奥に奇妙なものを見つけた。植物の蔓が無数に絡み合い、球体になってその場に鎮座していた。その蔓はヤドリギのものとやや似ている。
――何だこれ? 明らかに場違いなものがあるんだが……。
透ノ国の地下研究所みたいに、変なものが生まれてきたら面倒だ。今は兄もいないし、あまり近寄らない方がいいのではないか。
そう思っていた矢先、手の中のヤドリギが更に蔓を伸ばして植物の塊をぐいぐい掻き分け始めた。やはりこの中に何かあるみたいだ。
「……はあもう、しょうがないな」
アクセルはもう一度短剣を取り出し、蔓を切りながら少しずつ球体を毟った。
何があるかわからないけど、今更後には引けない。どうせ出入口は塞がれてるし、兄が何とかしてくれるまで自分も出られないのだから。
半ば開き直るような気持ちで毟っていくと、キラッと光る何かが見えてきた。
それは宝石等ではなく金色の毛のようだった。というかこれは、誰かの金髪ではないか。
――げっ……! 誰かいる!?
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