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第2130話

 自分一人で何とかするには、この出来事は大きすぎる。事情もさっぱりわからないし、どうすればいいかもわからない。  とにかく急いで兄と合流しなくては。そしてバルドルを復活させなくては。  アクセルは地下の小部屋を出て、階段を駆け上がった。  出入口は相変わらず三分の二が塞がれたままで、バルドルどころか自分が抜け出せる隙間もない。  ――ああもう……こんなところで立ち往生してる場合じゃないのに……。  内側から力を込めて押してみたが、その程度で積み重なった瓦礫が動くはずもない。自力ではどうすることもできなさそうだ。  もどかしいが、ここは体力温存も兼ねて待機しているしかないのかも……。 「……!」  その時、耳元で微かに息づく音が聞こえた。  ハッとしてバルドルの手首を掴み、脈を確認する。死んでいるものとばかり思っていたので、生死を確かめることも忘れていたが……。  ――生きてる……!?  ミスだったら困るので、もっとわかりやすい首筋に手を当ててみた。  すると小さな脈拍が指先に伝わってきた。ゆっくりではあるけれど、どうやら間違いではないようだ。 「バルドル様……!」  ほとんど死にかけだが、生きているなら話は変わってくる。一刻も早くここから出て、然るべき手当てをしなくてはならない。  アクセルはもう一度、出入口を塞いでいる瓦礫を押した。やはりびくともしなかった。  ――こうなったら……!  バルドルの身体を安全な場所に寝かせ、愛用の小太刀を抜き放つ。  そして目を閉じて精神を集中させ、込み上げてくるエネルギーを一気に爆発させた。 「……タアアアァァッ!」  瓦礫に向かって勢いよく小太刀を振り上げる。  小太刀そのものの衝撃に加え、強力な風の刃も瓦礫に直撃し、凄まじい爆音が生まれた。  ドカーンという音と共に積み重なっていた瓦礫が吹き飛ばされ、出入口に明るい日差しが差し込んでくる。  細かい瓦礫はバラバラと降り注いできたけれど、何とか大人一人が出られそうな隙間は空いた。  ――や、やった……!  イチかバチかだったけど、成功してよかった。思い切ってやってみるものだ。

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