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第2134話

 家に帰ったら、案の定兄がキッチンで食材を広げていた。  再開した市場に寄って食材をしこたま買い込んできたらしく、ありとあらゆる肉、卵やミルクが揃っている。野菜が少ないのはいつものことか。  アクセルはリビングのソファーにバルドルを座らせ、ハチミツ入りレモン水をグラスに注いで持って行ってあげた。 「喉も渇いていらっしゃるでしょう。まずはこれをどうぞ」 「あ、りが……げほっ、げほっ……」 「ほら、無理をなさらないで。調子が悪ければ声も出さなくていいですからね」  もしかすると、捕らえられた時に喉を潰されているのかもしれない。  詳しいことは筆談で教えてもらうとして、今は体力回復に努めてもらおう。 「こんにちはー! フレインに呼ばれてきたよー」  ベランダの窓から、ミューが元気よく手を振ってくる。後ろにはジークとユーベルも控えていた。 「皆さん、お久しぶりです……。今日は一体……」 「大事な話があるっていうんでな。食事しながら語ろうと誘われたのさ」 「は、はあ……しかし食事って言っても……」  まだ何もできてないのに、と言おうとしたら兄がキッチンから出てきた。 「ああ、みんないらっしゃい。ちょっとバタバタしてるけど、その辺に適当に座っててくれる?」  今度はこちらをキッチンに連れ込み、広げた食材を前にして言う。 「バルドル様にミルク粥を作ってあげて。あと、みんなで食べられるサンドイッチみたいな軽食も。その間に私はみんなと会議してるからさ」 「え、いや……俺も話聞きたいんだけど。毎回俺ばっかり飯炊きなのは困るぞ」 「じゃあ私が作るかい? その場合はお前がバルドル様から話を聞くことになるけど、ちゃんと聞き出せる?」 「それくらい俺でもできるって」  そう答えたのだが、兄は声を小さくして耳元でこそこそと喋り始めた。 「というかね、私はまだあのバルドル様が本物かどうか判断しかねているんだ。いつものお屋敷にいるバルドル様の方が本物で、こっちは誰かの罠って可能性も少し残ってる」 「こっちが偽物……!? いや、さすがにそれはないんじゃ……」

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