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第2135話

「ないと思うよ。でも絶対っていう確証もないでしょ。こういう怪しい事象に遭遇した時は、あらゆる可能性を考えて堅実に行動しないと。だからみんなを呼んだってのもある」 「……!」 「みんな強いし、不測の事態が起きても柔軟に対処できるからね。うちにいるバルドル様が、妙な技をぶっ放してきても何とかなると思ってさ」 「妙な技って……」 「メリナちゃん曰く、亜空切断をした神様の中にバルドル様も含まれているんでしょ? まだ油断できる段階じゃないよ」 「う……」 「で、どうする? 私がご飯作る?」 「え……ええと……」  それを聞いたら、何だか自信がなくなってきた。  バルドルなら変なことはしないと信じ切っていたけれど、黒幕の可能性もわずかながら残っているのか。なんとも悲しい話だが、今は完全否定できるだけの材料がない。情報が少なすぎる。  アクセルは肩を落とし、呟くように言った。 「俺が作ります……」 「うん、それがいいよ。それじゃ、よろしくね」  そう笑顔で肩を叩き、兄はキッチンを出て行った。  何だか上手く丸め込まれたような気もするが、言われた通りアクセルはバルドル用のミルク粥とお客様用のサンドイッチを作った。食材が潤沢にあるおかげで、肉や卵をたくさん挟むことができた。なかなか食べ応えがあるのではないだろうか。 「それでバルドル様、何があったのかお話を聞かせていただきたいんですけど」  兄が早速バルドルから話を聞き出そうとしている。 「声が上手く出せなければ、筆談でも構いません。紙とペンは用意してあります」 「あ……」 「本当はゆっくりお休みしていただきたいんですが、こちらも情報が少なすぎてどう対処していいかわからないものでね。最低限の事情だけでもお聞きしたいんです」  するとバルドルは、納得したようにこくりと頷いた。この反応を見ている限り、やっぱりこちらが本物っぽいのだが……。  バルドルがペンを手に取り、紙に文字を書いていく。結構長い文章らしく、兄とその友人たちはしばらく黙ってバルドルの手元を眺めていた。

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