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第2136話

 アクセルはひっそりとテーブルに食事を運び、飲み物を淹れようとまたキッチンに戻った。 「ありがとうございます、バルドル様。ちょっと読み上げさせていただきますね」  バルドルがペンを止めたらしく、兄が筆談の紙を預かる。  キッチンにいるアクセルにも聞こえるように、ハッキリした声で内容を読んでくれた。 『あれはアクセルがホズと魔力の供給源を断ちに、採掘場に行った時だったかな。私は屋敷で軽食を作りながら、二人の帰りを待っていたんだ。しばらくしてホズが帰ってきたんだけど、何故かアクセルの姿がなくて。ホズ曰く、先にヴァルハラに帰ったっていうから、そうなのかと思って納得したんだ。そしたら……急に頭に強い衝撃を感じて、気が遠くなってしまって……そこから先はほとんど覚えてない』  コーヒーを淹れながら、アクセルはぎょっと目を剥いた。危うく熱々のコーヒーをこぼしてしまうところだった。 「いや、ちょっと待ってください。俺、あの時はちゃんとホズ様と一緒に帰りましたよ? ずっと二人でいたし、途中で別れた覚えもありません。本当です」  全員分のコーヒーを運びつつ、反論してみる。  すると兄はしたり顔で頷いた。 「うん……だから、単体で帰ってきたホズ様が偽物だったってことじゃないのかな。神様の中には誰かに変身する術を使える人もいるだろうし。その都度必要な人物に化けて動き回っていたのだとすれば、今までのことが全部腑に落ちる。ねぇ、バルドル様?」 『そうだね。変身術はそう難しい術じゃないし、やろうと思えばできる人は多いはず。パッと見ただけじゃ見分けがつかないからね』 「そんな……。じゃあ、俺たちが帰ってきた時点でバルドル様は偽物にすり替わっていたってことに……」 「……そういうことになっちゃうね。ホズ様が気付いたかどうかは知らないけど」  今更ながらぞっとしてきた。  ――そんな前から入れ替わっていたのか……? だったら、メリナの封印方法を尋ねに行った時も……。  当然、偽物だったということになる。

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