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第2139話

「そもそもの話、魔剣士が中堅ランカーの住宅街を襲撃したのも不自然だったのですよ。中堅ランカーがいなくなればランクが上がるとでも思ったのかもしれませんが、それを差し引いてもデメリットが大きすぎます。食料も足りなくなりますし、棺や泉だけでなく魔法のドラムみたいな生活に便利な魔法具も使えなくなりますから」 「それに、みんなが復活した後の仕返しが怖すぎるよー」  と、ミューがサンドイッチを頬張りながら言う。 「いくら魔法で無双できても、彼ら自体は強くないもんねー。武器破壊されちゃったら何もできないし、中堅ランカーが束になって襲ってきたら、逆にメタメタのギタギタにされちゃうよー。僕が魔剣士だったらやらないなー、そんな怖いこと」 「じゃ、じゃあ……中堅ランカーの住宅街を消し飛ばしたのは、誰かからの命令だったってことか? しかもその命令を下したのは、ヴァルキリーじゃなくてロキだったと……」 『直接命令はしてないかもだけど、黒幕だった可能性はありそうだね』  バルドルが再び筆談を始める。 『ロキは本当に狡猾な神だから、何とか拷問から逃れる術はないかと策を講じたんだろう。騙しやすいヴァルキリーをそそのかして、ヴァルハラをめちゃくちゃにさせて、オーディン(父上)を弱らせて……』 「でも……拷問から逃れるだけなら、何もバルドル様に近づく必要はないですよね? 今になってバルドル様に危害を加えたのは何でなんです?」 『ロキは神になりたかったんだよ』  バルドルが書いた言葉に、アクセルは少なからず衝撃を受けた。  バルドルは続ける。 『ロキはオーディン(父上)と兄弟の契りを交わして、さも神族であるかのように振る舞っていた。でも彼は、あくまで巨人族なんだよ。決して神族にはなれない。そこが彼のコンプレックスだったんだろうね』 「……!」 『そう考えると、私のことが嫌いなのも理解はできるんだ。私は立場も才能も比較的恵まれているから、ロキにとっては一番目障りな神だったろう。だから拷問から抜け出して、真っ先に私を狙いに来たんだね……』

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