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第2141話

 ――別に、直接お屋敷に乗り込んでいっちゃってもいいと思うんだけどな……。  甘いカフェオレを飲みながら、心の中でそんなことを考える。  ロキのことだから、罠を仕掛けているのは当然だろう。屋敷にどんな罠を仕掛けているかも想像がつかない。  でも、だからといってここで足踏みしていても何も始まらない。  こうして皆で話し合っている間にも、ロキは虎視眈々と次の作戦の準備をしているかもしれないのだ。のんびりしていたら、またヴァルハラが荒らされてしまう可能性もある。  ここは少し危険でも、思い切って賭けに出てしまった方がいいのではないだろうか。  ――俺はもう嫌だぞ、ヴァルハラをめちゃくちゃにされるのは……。  早く平穏な日々に戻りたい。いつものように鍛錬をして、市場で自由に買い物して、死合いで思いっきり戦って、次の朝にはまたいつも通りの日常に戻る……そんな日々を過ごしたい。  自分の夢は、早く兄に追い付いて命懸けの死合いを行うことなんだ。いつまでもトラブルに足を引っ張られたくはない。 「それで、結局ロキの目的ってアースガルズの神々への復讐なんですか?」  確認するように、兄がバルドルに尋ねている。  バルドルは首をかしげていたが、小さく頷いてペンを走らせた。 『そうかも。逆恨みも甚だしいけど、そんなのロキ本人からしたら関係ないからね。復活した暁には、私たちに復讐してやろうって考えるのは当然の流れかもしれない』 「じゃあ、仮にロキが神々に反旗を翻したとして、それに(くみ)してくれそうな巨人族はどれくらいいますか?」 『どうだろう……。具体的な人は思いつかないけど、ロキは口が上手いから、中立だった相手を言いくるめて味方に引き入れることはできると思う』 「ヴァルキリーたちはどうですか? 今のところ彼女たちは、ロキにいいように使われている状況なのですが」 『うん……彼女たち、頭数は多いからね。戦闘力もそこそこだし、何の疑いもなくロキに従ってくれるのだとしたら、戦力としては申し分ないよ』

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