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第2142話
「……それはかなり困りますね。ロキに辿り着く前に、ヴァルキリーたちを突破しないといけないわけですか」
うーん……と再び考え込む兄。ジークとユーベルも曖昧な顔のまま、眉間にシワを寄せていた。
唯一ミューだけが、いつもの表情でサンドイッチを食べまくっている。
「ねーアクセル、僕喉渇いたー。何か新しい飲み物淹れてきてー」
「あ、うん……わかった」
言われるがまま、アクセルはキッチンに戻って新しくコーヒーを淹れ直した。
お湯を沸かし、コーヒー豆を挽き、ドリップにお湯を注ぎ込みながら悶々と思案する。
「ねー、まだー? 飲み物作るの面倒だったら、お水でいいよー」
待ちきれなかったらしく、ミューもキッチンに入ってきた。そしてキッチン周りを見回し、巨大なミルク缶を見つけて「これでもいいよー」などと言い始める。
この自由奔放なところは、強さに裏打ちされたものだろうか。さすがというか、何というか……。
「そんなことよりミュー。ちょっと相談があるんだ」
「あーれ、アクセルが僕に相談とか珍しいねー。どうかしたー?」
「バルドル様の屋敷に、偵察に行かないか?」
「偵察?」
「ここであれこれ考えていても、敵側の動きはわからない。新しい情報も入ってこないし、そうなったらこっちから動くしかないんだ。だからといっていきなり本拠地に乗り込むのは危険すぎるから、まずは外からこっそり敵情視察をしたいんだけど、どうだろう?」
横目でミューの反応を窺う。
本来なら、こういう考えはみんなの前で言うべきなのだろう。
でも兄の性格上、
「そういうことなら私たちで行ってくるから、お前は図書館で調べ物の続きでもしておいて」
……などと言いかねない。あるいは頭ごなしに「そんな危ないこと、ダメに決まってるでしょ」と否定されるのがオチだ。
その点、ミューなら面白半分でついて来てくれそうな気がする。
仮に何かあったとしても、ミューくらい強ければ相手を問答無用でぶっ飛ばせるだろう。側にいてくれれば非常に心強い。
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