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第2143話

「いいよ、なんか面白そうだし」  案の定、ミューはあっさりと承諾してくれた。  やはりミューに声をかけて正解だったようだ。 「でも、どうやって外出するー? こっそり出て行くにしても、誰かに見つかりそうだよねー」 「え? 夜中に出て行けば大丈夫じゃないか?」 「それはどうかなー。僕は一人暮らしだからいいけど、アクセルはフレインがいるじゃない? バレずに出てこられるのー?」 「だ、大丈夫だって。一度寝たら足音くらいで起きないだろうし」 「それはアクセルだけでしょー……。一度寝たら何されても全然起きないって、フレインが嘆いてたよー」 「う……」  ミューに呆れられ、アクセルは言葉を失った。  確かに兄だったら、例え寝ていたとしても普通に気づきそうだ。知らない誰かが接近していても、呑気に眠り続けているのは自分だけである。 「……じゃあ、いつ出掛ければいい? さすがに昼間じゃバレバレだろ」 「やー、そんなこともないんじゃない? 狩りに行くフリでもして昼間に偵察に行った方が、逆に怪しまれないと思うなー。ホラ、狩りなら多少帰りが遅くなってもごまかせるしー」 「そうかな?」 「そうだよー。てか、夜中の偵察じゃ敵の概要がよく見えないじゃない? それじゃ偵察する意味ないよねー」 「う……ま、まあそうか……」  夜目が効かないわけではないが、どうせなら明るい昼間に見に行った方が様子も探りやすい。バルドルの屋敷に何人警備がいるとか、周りに術がかけられているかどうかとか、そういうことは昼間の方がわかりやすい。 「じゃあ、明日は僕と狩りに行こうねー。ケイジの饅頭屋の前で待ってるよー」 「……そんなところで待ち合わせ? もっと人目につかないところにした方が」 「いいのいいの。それくらい堂々としてた方が、逆に怪しまれないからさー。……あ、コーヒー入った? 僕の分はミルクとお砂糖いっぱい入れてねー」  好き勝手なことを言って、ミューはキッチンを出て行った。  ――明日の朝、ケイジ様の饅頭屋の前……か。

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