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第2144話
何でそんなところを指定したのか謎だったが、ひとまず偵察に付き合ってくれそうで安心した。
アクセルは新しく用意した飲み物をお盆に乗せ、リビングに持って行った。
兄たちは未だにああでもないこうでもないと頭を悩ませているようだったが、一度話を区切るように兄が手を叩いた。
「とりあえず、ざっくりした事情はわかりました。今後のことは我々の方で検討しますので、バルドル様はゆっくり休んでください」
『そんな、休んでいる場合じゃないよ。屋敷にいるホズのことも気になるし……』
「気持ちはわかりますけど、バルドル様、今はかなりボロボロの状態でしょう? 声も上手く出せないですし、魔法も使えないんじゃないですか?」
兄に言われて、バルドルは悲しそうに眉尻を下げた。
兄が更に続ける。
「バルドル様には、これからやっていただきたいことが山のようにあるんです。本当にロキを相手にするのなら神々の協力は必要不可欠ですし、その交渉はバルドル様にしかできません。そのためにも今は体力を回復していただかなくては」
『そう、だね……。フレインの言う通りだ。今の私じゃ、足手まといにしかならないよね』
「さ、まずは英気を養って。弟が作ったミルク粥、美味しいですよ。弱った時にピッタリなんです」
『……ありがとう、いただくよ』
バルドルはペンからスプーンに持ち替え、未だに温かいミルク粥を一口掬った。
食事のスピードは極めてゆっくりだったが、少しずつ減っていくミルク粥を見て、アクセルもホッとした。この調子で栄養をとって十分な睡眠をとれば、元の状態まで回復するだろう。
「んじゃ、俺たちはひとまず失礼するぜ」
話を聞き終えたジークたちは、帰り支度をして玄関の外に出た。
見送りにアクセルも外に出たら、ジークは少し声を潜めてこんなことを言った。
「お前さんたち、バルドル様をしっかり見張っててくれよ。精神的にだいぶ追い詰められてるから、ちょっとでも回復したら勝手に屋敷に戻りかねん」
「えっ……?」
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