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第2146話

「ああ、そうだ。きみたちの食事がまだだったな。ごめんごめん、今すぐ作るよ」  何なら、自分たちもしっかりと食事ができていない。せっかく久々に食料が揃っているんだし、今のうちに栄養をつけておかないと。  そう思い、アクセルはキッチンに入って簡単でありながら栄養価の高い「卵チーズドリア」を作った。  温めたご飯を器に盛り、干し肉とミルク、塩コショウを加えてよく混ぜる。均等に混ぜたら器を慣らし、その上にピザチーズをたっぷり乗せ、オーブンで焼き色がつくまでこんがり焼く。この時、真ん中に卵を落とせる窪みをあらかじめ作っておくのがポイントだ。  上手く焼けたら器を取り出し、常温にしておいた卵を真ん中に落とす。最後にブラックペッパーを適量ふりかけたら完成だ。  熱々のドリアのおかげで、生卵がイイ感じに半熟になってくれるので、それを崩しながら食べると美味しいと思う。 「さ、できたぞ」  ベランダへの窓を開け、作りたてのドリアを運んでやる。  するとピピは大喜びでこちらに駆け寄ってきて「はやくはやく」と言わんばかりに、こちらにじゃれついてきた。  カメも閉じ籠もっていた甲羅から手足と首を出し、目ざとくドリアの器に近づいてくる。 「二匹とも、熱いから気を付けて食べるんだぞ? 足りなければおかわりもあるからな」 「ぴー♪」 「グアァ……」  二匹の食べっぷりを眺めつつ、アクセルたちもベランダで一緒に食事をすることにした。  久しぶりのしっかりした食事は、家族との会話もあってとても味わい深かった。 「それにしても、バルドル様遅くない?」  食後の紅茶を飲みながら、兄が時計を確認した。 「もう一時間近く経ってる気がするんだけど」 「そんなに経ってるか? ちょっと見てくる」  うっすらと嫌な予感がし、アクセルは浴室を覗いてみた。  バルドルは元々長風呂の傾向があったけど、他人の家でも堂々と長風呂をするかと言われたら……。 「えっ!? いない!?」  案の定、バルドルの姿はそこにはなかった。  用意していた替えの服もなくなっており、代わりに一枚のメモが置いてある。

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