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第2147話
『ちょっと、外の空気を吸ってくるね』
「えええ!?」
驚愕し、すぐさまリビングに駆け戻った。
「大変だ、兄上! バルドル様がいなくなった!」
「……えっ、本当に? でも玄関開いた音しなかったよ」
「俺たち全員ベランダに出てたから、多分聞こえなかったんだよ。まだ遠くへは行ってないはずだから、俺ちょっと捜してくる。バルドル様が帰ってくるかもしれないから、兄上は家にいてくれ」
「わかったよ。念のためにこれ持って行きなさい」
兄に緊急呼び出し用の鈴を放り投げられ、片手でキャッチする。そして急いで玄関を飛び出した。
――バルドル様……まだ本調子じゃないのに、一体どこに……。
ジークやユーベルが懸念していた通り、見た目以上に思い詰めていたみたいだ。元々高名で力のある神様だから、何もできない自分が余計に情けなく思えてきたに違いない。
アクセルは夜のヴァルハラを駆け回り、必死にバルドルを捜した。
市場を回り、スタジアムの前を通り、鍛錬場を過ぎ、オーディンの館や泉にも行ってみる。
最後に世界樹 の前を訪れたところで、ようやくそれらしい人物が見つかった。
「バルドル様!」
ぼんやりと大樹を見上げている金髪の青年。着ている服は兄の私服だが、バルドル本人に違いなかった。
彼は肩越しにこちらを振り返ると、呟くように声を発した。
「アクセル……」
「よ、よかった……心配しちゃいましたよ……」
「……ごめんね、勝手に出てきてしまって」
「いえ……無事ならいいんです。あ、声の調子戻ったんですね……」
「おかげさまでね……」
「ほ、本当によかった……。バルドル様に何かあったら、どうしようかと……」
ホッとしたら息が切れてきて、アクセルは肩で大きく呼吸を繰り返した。ここまでかなりのスピードで走り回ったので、もうスタミナも切れそうだ。
「……ごめんね……本当に……。きみたちには、たくさん迷惑をかけた……」
「いえ、いいんです。バルドル様は何も悪くないんですから、あまり思い詰めるのはやめにしましょう」
「…………」
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