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第2148話

「そろそろ帰りませんか? 風呂上がりに夜風に当たりすぎると風邪をひきます。いろいろあってお疲れでしょうし、今日はもうお休みした方がいいですよ。ベッドも用意してありますから、うちでゆっくりしてください」  そう言ったのだが、バルドルはまだ浮かない顔をしていた。  彼はふいと視線を逸らし、再び世界樹(ユグドラシル)を見上げた。そして呟くように言葉を発した。 「……ホズは今どうしてるんだろう」 「えっ……?」 「私が偽物と入れ替わっていること、気付いているのかな。気付かずに、ロキを私だと思って生活してるのかな。いいように使われてたりしないかな。ホズまで私みたいに、大変な目に遭ってたらどうしよう……」 「バルドル様……」 「でも、今の私じゃどうすることもできない。ホズを助けに行くどころか、ここでおとなしくしているしかない。何とも情けない話じゃないか」 「そんなことは……」 「……私は一体、何度ロキに苦汁を飲まされればいいんだろう」  バルドルがきゅっと自分の拳を握り締めた。  彼がロキにやられたのは、アクセルの知る限りこれで二度目だ。一度目はヤドギリで殺され、今回も魔法が使えないくらい衰弱させられてしまった。おまけに屋敷を乗っ取られ、愛弟・ホズの様子もわからない。  バルドルからすれば、さぞやもどかしく悔しい状況だろう。 「あの……これ、兄にはまだ内緒なんですけど……」  アクセルは小声で言った。 「俺、明日の朝ミューと一緒にバルドル様のお屋敷を偵察しに行く予定なんです」 「え……そうなの?」 「ええ。向こうが今どんな状態なのか、探ってきた方がいいと思って。その時に、ホズ様の様子も見てきます。あわよくば、こちらに連れて来られるかもしれませんし」 「…………」 「だからバルドル様は、うちで兄と待っていてください。お屋敷の状況は気になるでしょうけど、今は自分の調子を取り戻すことを優先させた方がいいですよ。バルドル様には早く元気になっていただいて、本来の力を貸していただきたいんですから」 「そう、だね……」

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