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第2150話
「兄上……」
「……ごめんね、情けないお兄ちゃんで」
そんなことない……と言おうとして、ふと既視感を覚える。
先程バルドルとも、ほとんど同じようなやり取りをした。普段は穏やかだけど、兄もバルドルも根底ではしっかり「お兄ちゃん」なのだなと実感する。
「やっぱり、兄上とバルドル様はよく似ているよ」
「どういうこと?」
「いや、『いざって時は自分が弟を守らなきゃ』みたいな気持ちが常にあるというか。バルドル様も、ホズ様のことずっと心配してたし」
「そりゃあ、お兄ちゃんは弟を守るものだからね。可愛い弟を心配するのは当然でしょ」
「そうかもしれない。ただ……弟側も、いつまでも守られているばかりじゃないんだ。兄上からすれば心配なところが多いんだろうけど、何かあっても自力でどうにかするくらいの気力はある。現に巨人族の神殿でも、自力でバルドル様を助け出してきたしな」
「まあ、ね……」
「きっと俺たちも、気付かないうちに疲れが溜まっていたんだよ。今までロクに食事できていなかったし、睡眠だって充分とは言い難かった。絶好調じゃないから、無意識に注意力が散漫しちゃうんだ。俺だって狂戦士モードがあっという間に切れちゃって、かなりショックだったもんな」
あの時の狂戦士モード継続時間は、一〇秒にも満たなかったと思う。
いろんな事件が起こりすぎて気付く余裕もなかったが、それだけ自分のエネルギーが足りていないということである。
アクセルは席を立ってマグカップを洗いに行った。
「細かいことを考えず、今日はもう休もう。いざって時にちゃんと動けるよう、体力はつけておかないとな」
「そうだね。……ところで、お前どこで寝る予定? ベッドはバルドル様に貸しちゃってるでしょ?」
「ああ、俺はソファーを使うからいいよ。兄上は自分のベッドで寝てくれ」
「それでいいの? 私と一緒に寝てもいいんだよ?」
「そ、それはちょっと……。バルドル様に見られたら、あまりよく思われないだろうし」
丁重に断ったら、兄はそれ以上食い下がることもなく提案を受け入れてくれた。
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