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第2151話

 何だかんだ疲労が溜まっていたこともあり、軽くシャワーを浴びた後はソファーに倒れ込むように寝てしまった。 「……おやすみ、アクセル。私たちはずーっと一緒にいようね」  そんなことを囁きながら、兄がタオルケットをかけてくれる。  夢うつつで意識が朦朧としつつも、アクセルの耳には兄の囁きがしっかり届いていた。それは兄からの、さり気ない釘差しのようにも思えた。  ――いや、でも明日は軽く偵察に行くだけだし……。ミューも一緒だし、何も起こらないよな……。  俺と兄上はずっと一緒なんだ。離れ離れになんて、なるはずがない……。 ***  翌朝。アクセルはいつもより少し早く目を覚ました。  一瞬どうしてソファーで寝ているのかと混乱しかけたが、すぐに現実を思い出してそっと寝室を覗いた。兄とバルドルはまだ眠っているようだった。  ――よかった、二人とも問題はなさそうだな。  ミューとの約束にはまだ時間がある。というか、ミューのことだから遅刻してくる可能性も高い。  とりあえず朝食でも作るか……と、アクセルはキッチンに入って朝食の準備をした。  卵とミルクを混ぜて溶き、砂糖も少し加えて卵液を作る。  それにスライスした食パンを浸し、たっぷり卵液を吸わせたところでフライパンにバターを引いて焼いた。香ばしい匂いが漂ってきて、自分でもちょっとお腹が空いてきた。焼きたてのフレンチトーストにヴァルハラのハチミツをかけて食べると、最高に美味しいのだ。 「おはよう、アクセル」  匂いを嗅ぎつけたのか、兄がキッチンに入ってきた。起き抜けのせいで、金色の髪が爆発している。 「おはよう。もうすぐ完成だから、顔洗って着替えてくるといいぞ」  そう言って火を止め、皿にフレンチトーストを盛ろうとした途端、横から兄に抱き締められた。 「……よかった、お前はちゃんといるね」 「あ、兄上……? 何だよ、急に……」 「いや、なんか昨日から落ちつかなくてさ。変な胸騒ぎがするっていうか、お前がどこかに行っちゃうような気がして不安だったんだ」 「えっ……?」

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