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第2152話
「バルドル様の不安が、私にも移っちゃったかな。モデルになった人が落ち込んでると、他人事とは思えないというか。万が一何かあって、お前と離ればなれになったらどうしようって、つい余計なこと考えちゃう」
「…………」
「でも、お前はちゃんとここにいるもんね。安心したよ」
「兄上……」
「さ、ご飯にしよう。顔洗ってくるね」
にこやかに洗面所に消えて行った兄を見て、アクセルは動揺を隠せなかった。
まるで、自分が偵察に行くことを知っているかのような口ぶりだった。いや、兄には話していないから知るはずがないのだが……。
――兄上に伝えておいた方がいいのか……? でも、伝えたら絶対止められちゃうしな……。
狩りに行くと嘘をついて偵察に行くのも正直どうなのかと思うが、ミューと約束してしまった以上、今更後には引けない。
バルドルの様子を見ていないといけないので、どちらかは居残る必要があるから、どのみち兄と出掛けることはできないのだ。
じゃあ兄が偵察に行けば……とも思うが、自分が留守番というのもそれはそれで不安が残る。兄の帰りが遅くて心配になり、つい捜しに出掛けてしまうのは日常茶飯事だし、その結果余計なトラブルに巻き込まれるのもしょっちゅうなのだ。
留守番中に妙な訪問者――例えばヴァルキリーが直接やってくるとか、メリナが仲間を引き連れて復讐にくるとか――があったら、上手く対応できるか自信がなかった。
そういうことを考えると、消去法で自分が偵察に行くのが一番だという結論に至る。
――万が一何かあったとしても、バルドル様には俺がどこに行くか伝えてあるしな……。きっと何とかなるだろう。
兄にはめちゃくちゃ怒られるだろう(絶対手酷くお仕置きされると思う)けど、情報が足りない中、ああでもないこうでもないと時間を費やすよりはずっといい。
こっちはもう、神々のわけのわからない戦いに巻き込まれるのはうんざりなのだ。さっさと平和なヴァルハラに戻して、兄と命懸けの死合いを行いたい。
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