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第2153話

 そのためにも、偵察を成功させて情報を持ち帰らなくては……。  できたての朝食をテーブルに並べ、アクセルはいつも通り食事をした。兄も喜んでフレンチトーストを味わってくれた。  バルドルは起きてこなかったが、起きたら皿を温め直すようにお願いし、出掛ける準備をした。 「おや、どこか出掛けるの?」 「ああ、ミューと山登りにな」 「えーっ、いいなぁ。私も一緒に行きたいよー」  案の定、兄は唇を尖らせて拗ね始めた。ここまでは予想通りだったので、アクセルは苦笑いして答えた。 「さすがにバルドル様を一人にはしておけないからな。かといって、険しい山を歩かせるわけにもいかないし……兄上はバルドル様と留守番しててくれ」 「ちぇっ、つまんないの。留守番とか、性に合わないんだけどなぁ」 「しょうがないだろ。今は留守番嫌いとか言ってる場合じゃないんだよ」 「じゃあ、バルドル様が回復したら私も出掛けていい?」 「えっ……? 出掛けるって、どこに?」 「山のハイキングコースを散歩とかさ。ずっと家に閉じこもっているのも不健康だし、バルドル様も外の空気を吸った方がいいでしょ」 「い、いや、それは……」  ハイキングコースは……ちょっとマズい気がする。鉢合わせにならないのは一〇〇パーセント確実だが、「お前どこにいたの?」なんて言われたらどう誤魔化せばいいのか。  ……それ以前に、「山登りどうだった?」って聞かれた場合も、上手いこと取り繕わないといけないのだが。 「と、とにかく今日は家にいてくれ。バルドル様だって、あちこち連れて行かれたら気が休まらないだろ。数日はゆっくりしていただこう」  それだけ言って、アクセルは急いで家を出た。  やっぱり自分は嘘が得意じゃない。正直に言えない罪悪感もどんどん大きくなる。  何だかバレていそうで怖いが、ここまできたら仕方がない。早くミューと合流しよう。 「あ、やっときたー」  ミューはケイジの饅頭屋の前で、大きな饅頭を頬張りながら待っていた。

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