2154 / 2198
第2154話
「もしかしたら来ないかもなーって、ケイジとお話してたんだよー。フレインに止められて出て来られないんじゃないかってさー」
「ご、ごめん……。でも何とか誤魔化してきたから」
「そっかー。上手くごまかせてるといいねー」
そう言って、ミューはケイジに「お土産のお饅頭ちょーだい」とおねだりした。
ケイジは当たり前のように蒸かしたての饅頭を箱に詰め、風呂敷に包んで渡してくれた。
「詳しい事情は知らぬが、くれぐれも油断せぬようにな」
と、ケイジが釘を刺してくる。
「世界には、思いもかけない事象が転がっている。目に見えるものだけが真実とは限らん。迷った時は、本来の目的に立ち返ってみることも重要だ」
「……!」
「では、健闘を祈る」
ケイジに見送られ、アクセルとミューは市場を離れた。
世界樹 を通り、目的の場所に向かいながら聞いてみる。
「なあミュー……ケイジ様に『バルドル様の屋敷に偵察に行く』って伝えたのか?」
「そこまでは言ってないよー。でもケイジのことだから、薄々気付いてたかもねー」
「そうか……」
「ま、そんなに心配いらないんじゃない? いざとなったらお饅頭投げつけて帰って来ればいいよー」
そんなことを言いつつ、大きな饅頭を食べ続けているミュー。
そうこうしているうちに、バルドルの屋敷が見えてきた。
念のためアクセルは、屋敷の様子が観察できる場所に隠れ、様子を窺った。
――見た目はあまり変わってないな……。
表向きは何かがあったようには見えない。いつも通りの上品なお屋敷で、門も解放されている状態だった。「いつでもウェルカム」みたいな雰囲気が漂っているので、ついそのまま訪問したくなってしまう。
「ん……?」
不意に、屋敷の左右から若いヴァルキリーが二人現れた。
二人は門の前で合流すると五分ほどその場に立ち止まり、再び屋敷の壁に沿って歩いて行った。
「……なんだあれ? 巡回してるのか?」
「そうみたいだねー。二人でぐるっと屋敷の周りを一周してるのかなー?」
「これもロキの指示なのか……? 警備が増えてるとか、面倒な……」
ともだちにシェアしよう!