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第2156話

 なるべく平常心を心掛けてドアをノックする。隣にミューがいてくれたが、それでも緊張は高まるばかりだった。  さて、誰が出てくるだろう。バルドルに変身したロキか。それともホズか。全然知らない人が出てきてもそれはそれで脅威だが、果たして……? 「どちら様だ?」  扉が開いて現れたのは、ホズだった。割とストレートな人物に、アクセルは少し拍子抜けした。 「あっ……ホズ様……お久しぶりです」 「なんだ、お前か。何か用か?」  そう尋ねてくるホズは、変わらず元気そうだった。何かを隠している様子もなく、いつも通り過ごしているように見える。少し安心した。 「あの、ホズ様……! 俺、ホズ様に大事な話があって……」 「大事な話って?」 「実は……ぐえっ!」  重要なことを話そうとした途端、後ろからミューにパカンと殴られた。思った以上に力も強く、目から星が出そうになった。 「あ、ごめーん。大事な話よりもっと大事なこと思い出しちゃったー。今日はもう帰るねー。これお土産だから、バルドル様と食べてー」  サッと饅頭の風呂敷を奪い取り、ホズに押し付けるミュー。そして強引にアクセルを引っ張り、屋敷から離れてしまった。 「ちょ、ちょっとミュー……!」  世界樹(ユグドラシル)の前まできて、ようやく解放される。 「何するんだよ……! せっかくホズ様を連れ出せるチャンスだったのに」 「ごめーん。でも、アレが本物のホズ様かどうか、わからないじゃない?」 「えっ……?」 「ロキは好きな人に変身できるんでしょー? バルドル様も、ホズ様に化けていたロキにやられたって言ってたしー。もしかしたらアレも、ホズ様に化けたロキだったかもー」 「あっ……」  その可能性は考えていなかった。  ロキはバルドルに変身していると思い込んでいたが、自由に姿を変えられるのなら、客人を出迎える時だけホズの格好になることもできるのか……。  ミューは続けた。 「さすがに、どっちかわからない状態でホズ様をヴァルハラに連れて行くことはできないよねー。万が一違ってたら、今度こそバルドル様殺されちゃうしー」 「っ……!?」

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