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第2157話

「ま、今回の任務はあくまで偵察だからー、そこまで成果を上げなくてもいいと思うんだー。ホズ様のことは心配だけど、どっちがどっちかわからない以上、僕たちにできるのはここまでだよー」  そう言われ、アクセルは大いに反省した。  ミューの言う通り、今の時点で自分たちにできるのはここまでだ。結果を急ぐあまり、自分たちが罠にかかったら本末転倒である。  あまり成果は上げられなかった気もするが、今回はやむを得ないだろう。 「……ごめん、ミュー。そこまで考えてなかった。止めてくれてありがとう」 「だいじょーぶ。結果的に危ないことは起きなかったから、おっけーだよ。お饅頭は無くしちゃったけど」 「ごめんな、本当に……」 「じゃあー、帰ったらアクセル、なにかおやつ作ってー」 「ああ、わかった」  二人で世界樹(ユグドラシル)を通り、ヴァルハラに帰り着く。  いつも通りの光景を見たら、何だか少しホッとした。  ――あのまま突っ走ってたら、ヴァルハラが更にめちゃくちゃになっていたかもしれないんだよな……。ミューがいてくれて本当によかった……。  報告も兼ねて、アクセルは一度家に戻った。  兄は庭で鍛錬まがいのことをやっていて、バルドルはそれを優しく見守っているようだった。 「おや、おかえり。外出はもういいのかい?」 「あ、ああ……今日は早めに切り上げることにしたんだ……」 「そうかい。無事で何よりだよ」  にこりと兄に微笑まれて、嫌な意味でドキッとした。  やっぱり兄上、俺が嘘をついているって見抜いているんじゃ……? 「そんなことよりさ。バルドル様の魔力、だいぶ回復してきたんだよ。今ちょっと試してたところなんだ」 「そうなのか? 試すってどんな?」  兄がバルドルに目配せした。  バルドルは人差し指を丸太の方に向けると、兄に向けてひょいと指先をスライドさせた。 「それ」  途端、丸太が一本兄の方へ飛んでいく。  兄は愛用の太刀を素早く振り抜き、飛んできた丸太をバラバラに輪切りにした。

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