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第2161話

「……バルドル様、あなたがアクセルを庇いたくなるのはわかりますよ。あなたの弟・ホズ様はアクセルに似てますからね。他人事とは思えないんでしょう」  兄が声音を抑え、淡々と述べる。 「なら、私の気持ちも少しは理解できるんじゃないですか? 何よりも弟を大事に想っているのに、その弟は兄のことなどそっちのけで勝手な行動をとってしまう。愛されていることを自覚しているくせに、自分が危険な目に遭ったら兄が心配すると知っているくせに、それでもなおこちらを無視して突っ走ってしまう。そのことに呆れて失望しているんです」 「フレイン……」 「今まで私は、自分の時間の大半を弟のために費やしてきました。甘やかすだけじゃなく、必要ならきちんとお説教もしたし、罰も与えてきました。たった一人の弟ですから、どこに出しても恥ずかしくない子にしようと育ててきたつもりです。……その私の愛情を、全部蔑ろにされたから『これはもうダメだ』と思ったんです」  聞きながら、アクセルは静かに息を呑んだ。  そうか、兄にとってはそれだけ複雑で重大な問題だったのか。  自分は「多少危険でも、無事に帰ってこられれば結果オーライだろう」くらいの軽い気持ちしか抱いていなかったが、そういう話ではないのだ。  兄の気持ちをほとんど考えていなかったこと――もっと言えば「誠心誠意謝れば、きっと何とかなるだろう」と甘く見ていたこと。そのことに兄は失望しているのだ。 「……フレインの気持ちはわかるよ。私も、ホズに勝手なことをされて怒り狂ったことは何度もあるし」  バルドルは真っ直ぐ兄を見つめ、言った。 「特にミーミルの泉の水を飲んじゃった時は、一番怒ったかもしれない。そんなことして欲しくなかったのに、知らない間に盲目になっちゃってて……。何というか、基本的に考えが甘いんだよね。私に愛されていることを知っているからか、心のどこかで『ちゃんと説明すれば兄上もわかってくれる』って考えてるの。そういうところに怒ってるのに、なかなか理解してくれないんだ。本当に困ったもんだよね」 「…………」

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