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第2162話

「ただね、そういう行動の根本的な部分には、いつも『私』がいるんだ。『もっと強くなりたかったから』っていうのも、『強くなって兄上の役に立ちたい』っていう理由だった。アクセルもそう。『偵察して情報を仕入れたかった』のは、『早く平和なヴァルハラにして、兄上と幸せな日々を送りたい』って気持ちの表れなんだ。決してフレインを蔑ろにしようとか、そんなことは思ってない。そこだけは理解してあげてくれないかな」 「…………」  兄はしばらく無言だった。こちらを振り向くこともなく、その場に佇んでいる。表情が窺えないため、何を考えているかもアクセルには読み取れなかった。 「……兄弟って難しいですね。大切に想い合っているはずなのに、時々思い遣りが大きくズレてしまう」  呟くように、兄が言う。 「……わかっていますよ、弟のことですから。ただ、今はちょっと許してあげる気になれなくて。ここで私が譲歩したら、またいつもの繰り返しになってしまいます。謝ればすぐ許してもらえると思われるのも、シャクですしね」 「そうだね……そんなこともある。いくらお兄ちゃんでも、何でもかんでも許せるわけじゃないよね」 「ええ……なので、しばらく頭を冷やそうと思います。大丈夫です、やるべきことはきちんとやりますから。仕事時に私情は挟みませんので、安心してください」  次に兄は、振り向かないままこう告げた。 「お前、早く昼食を用意してあげなさい。ミューにも、ちゃんとお礼代わりのお菓子を作ってあげるんだよ」 「は……い……」  なんとか返事をして立ち上がった頃には、兄は既にいなくなっていた。  代わりにバルドルが申し訳なさそうに、近寄ってくる。 「ごめんね、アクセル。私がもう少し上手く立ち回っていれば、こんな兄弟喧嘩に発展することもなかったのに……」 「いえ……黙って偵察に行くことを選択したのは俺ですから……。怒られることは覚悟していたので……ある意味、自業自得なんです……」

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