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第2163話
「そうはいっても、やっぱり半分は私の責任だよ。ホズの安否も気になってたし、アクセルが言い出さなかったら私から偵察をお願いしていたと思う」
「…………」
アクセルは少し目を伏せた。
――ホズ様は、結局安否不明のままだったな……。
屋敷から出てきたのは本物だったのか、それとも偽物なのか。無事なのか、そうでないのか。そういうことが何もわからないまま撤退してきてしまった。
危険を冒したからにはバルドルを安心させてあげたかったのに、それもできない。自分の力不足が情けない。
「バルドル様……ホズ様は……」
「……いいよ、無理しなくて」
バルドルはやや悲しげに微笑むと、優しくこちらの髪を撫でてきた。
「ホズのことはもちろん心配だ……けど、今の状況で焦っても仕方がない。これ以上アクセルを危険な目に遭わせるわけにはいかないし、魔力が完全に回復するまでおとなしくしていることにするよ」
「ですが……」
「いいんだ。完全回復すれば、魔法で遠くの様子を見ることもできるし。それまでの辛抱だよ。……それより、アクセルが無事に帰ってきてくれてよかった。万が一帰ってこなかったら、フレインに顔向けできないもの」
「…………」
アクセルは、兄が消えて行ったキッチンのドアを見た。
――兄上は……しばらく怒ったままなんだろうな……。
悪いことをしたとは思っている。怒らせるようなことをしたのは自分だから、言い訳するつもりもない。
ただ、それならもっとこちらに怒りをぶつけて欲しかった。気絶するまで殴っていいから、もっと罰を与えて欲しかった。きちんとお仕置きして、それで手打ちにして欲しかった。
このまま不機嫌な兄と顔を合わせるのは、非常に気まずいのだが……。
「ねー、もう喧嘩終わったー?」
あえて空気を読まず、ミューがひょっこり顔を出してくる。
「僕、お腹空いたんだけどー。早くご飯作ってくれないー?」
「あ、ああ……ごめん。今作るから……」
アクセルは慌てて食材を掻き集め、昼食用のパンケーキを焼いた。
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