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第2165話
「うーん、僕は偽物かなって思ったよー。あそこで本物のホズ様を出してたら、訪問者に変なこと吹き込まれるかもしれないしー」
「そうか……やっぱりな……」
「えっ……? ホズが屋敷から出てきたの?」
バルドルが口を挟んできたので、アクセルは慌てて頷いた。
「ええ、まあ……。ただ、それが本物だったかどうかわからなくて。もしかしたらロキが変身した偽物かもしれないので、結局安否不明なんです」
「そう、か……。まあそうだよね……」
「で、でも、本物だった可能性もありますからね。バルドル様に化けたロキと、今も仲良く屋敷で生活しているかもしれないですし、無事の可能性も十分あります」
「うん……それはそれで複雑だけど……」
ロキの変身を見破れないというのも、バルドルからすれば微妙な気分なのだろう。
早いところ安否を確かめられればいいのだが、今はバルドル自身の魔力の回復を待つしかない。それがまたもどかしい。
パンケーキが焼き上がり、熱々の状態で皿に重ねて盛り付ける。
その上にハチミツを垂らし、バターを乗せ、周りにバナナ等のフルーツを添えたら完成だ。
「……できたぞ。みんなで食べよう」
「わーい! ふわふわパンケーキだー! おかわりある?」
「それは食べ終わってから言ってくれ。……俺は兄上を呼んでくるよ」
アクセルはエプロンを外し、ベランダから庭に出た。
兄は自分が輪切りにした丸太を集め、薪と一緒に一ヵ所にまとめているところだった。
傍らでは例のカメがじっとその様子を見つつ、時折こっそり輪切りの木を食んでいる。
「兄上……昼食ができたんだが」
「そうかい、ありがとう」
意を決して話しかけたのだが、兄の反応はいつもより薄かった。返事をしただけで、会話も全然続かない。
そりゃそうだよな……と思いつつも、やはりこういう反応は寂しい。一緒に暮らしているのに、赤の他人みたいに思えてきてしまう。
「あの、兄上……」
早く仲直りしたい一心で更に話しかけようとした時、
「許さないよ」
謝罪するより早く、兄が釘を刺してきた。
会話すら拒否されてしまい、胸が刺されたように痛んだ。その場で泣きそうになった。
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