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第2166話

 言葉を失って立ち尽くしていると、兄は更に続けた。 「いくら謝られても、許せないことはある。同じようなことを何回も繰り返されて、いい加減うんざりしてるんだ。誰が何と言おうと、しばらくお前のことは許せそうにない」 「…………」 「生活は普通にするから、あまり話しかけないでくれる?」  兄が腰を上げ、目の前を素通りしていく。  ここまで冷たい態度をとられたことはなかったので、本当に泣きそうになった。  そんなに怒らせてしまったのか、いつになったら許してくれるんだろう、下手したらずっとこのままなのかも……という不安で頭がいっぱいになり、指先から血の気が引いていく。  それでも、何とか絞り出すようにアクセルは言った。 「……嫌だよ」 「え?」 「兄上と喧嘩したままなのは、嫌だ。ヴァルハラと言えど、今は何が起きるかわからないんだ。だからその日のうちにちゃんと仲直りしたい……。でないと、絶対後悔する……」 「…………」 「俺のこと、しばらく許せないならそれでもいいよ……。でも、喧嘩別れなんて死んでも御免だ。わだかまりを残したまま、それっきりなんて……俺は……もう……」  ぐすん、と鼻をすすり上げる。  生前の自分は、結局気持ちを伝えられないまま兄を看取る羽目になった。喧嘩別れとは違うが、「これが最後になるのなら、もっと早く正直な気持ちを口にすればよかった」と後悔したのは確かだ。  兄が亡くなってヴァルハラにくるまでの記憶がほとんどないのも、そういうショックな経験が焼き付いているせいだと思う。  だからこそ、何とかして仲直りしたい。今は死んだからといって必ずしも復活できる状況ではないのだ。だから余計に、その日のうちに関係を修復したかった。  だが兄は深々と溜息をつくと、投げ捨てるようにこう言った。 「……困るんだよな、そういうの。なんか仲直りを強制されてるみたいで。今はそういう気分じゃないって言ってるのに」 「でも、俺は……」

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