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第2167話
「お前のことは愛してるよ。どんなに腹立たしくても、根っこの部分ではどうしても嫌いきれない。一人ぼっちの私に与えられた唯一の家族だもん。勝手にいなくなられたら困るから、ピンチな時はつい助けに入っちゃう。お前が勝手に引き起こしたトラブルだとしても、私としては放っておけないんだ」
「兄上……」
「ただ……その対応がお前の『甘さ』に繋がっているのは否定しきれない。ピンチになれば毎回お兄ちゃんが助けてくれるとか、謝ればすぐに許してもらえるとか、そういう風に認識されるのは非常にマズい。成り行きでピンチになってしまったならともかく、自ら危険な場所に赴くなんてもってのほかだ」
「……。……ごめんなさい」
何を言えばいいかわからず、考えに考えた結果、出てきた言葉は結局謝罪の一言だった。
謝っても許してくれないのはわかっていても、やはりアクセルにできることは誠心誠意謝ることだけなのだ。それ以外にできることがないから、こうして一生懸命頭を下げているのである。
――これなら、普通にお仕置きされた方がずっと楽だったな……。
また泣きそうになり、ぐすんと鼻をすする。
一生懸命泣くまいと我慢していたのだが、どうしても胸の痛みに耐えられなくなって結局ボロボロ涙をこぼしていた。今泣いたら「泣き落とし」みたいに見えてしまうのに、それでも我慢しきれなかった。
「……だから、そういうのやめてってば。私が意地悪してるみたいじゃない」
兄がこちらに近づいてきた。
アクセルの頭に手を置き、宥めるようにこんなことを言ってくる。
「ずっと許さないって言ってるわけじゃない。少し時間をくれって言ってるんだよ。今すぐじゃなくて、仲直りしてもいいかなって思えるくらいに頭を冷やしたいんだ。案外、一晩寝れば怒りも治まっているかもしれないし」
「うう……」
「だからもう泣かないの。お前に泣かれるのが一番弱いんだからさ……勘弁してよ、ね?」
「兄上ぇ……」
もう限界だった。
アクセルは正面から兄に抱きつき、子供のように泣きじゃくった。
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