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第2169話

 ミューも「暇だから」という理由で付き合ってくれたが、そこはさすがにランキング一位の戦士だけあって、 「じゃあ次は走り込みでー、その後は素振り一〇〇〇回ねー」  などと、容赦なく鍛錬メニューを追加してくれた。  ――う……やっぱりミューはいろんな意味で規格外だ……。  さすがに疲れて小休止をしている傍ら、ミューは楽しそうにピピと駆けっこをしている。あんな小さい身体のどこにそんなスタミナがあるのか、つくづく不思議でならない。 「フレイン、あまり無理しない方がいいよ」  バルドルに窘められ、兄が太刀を振るう手を止めた。  兄の周りには、輪切りになった丸太が大量に散乱している。 「ほら、こんなにたくさん丸太切ってもすぐ使えないし。今日はこのくらいにしておいた方がいいんじゃないかな」 「……そうですね。じゃあミューと走り込みでもしてきます」 「もう走り込み? 少し休憩した方がいいんじゃない?」 「いえ、今はクタクタになるまで身体を動かしたい気分なので……。ハチミツ入りレモン水でも用意しておいてくださると嬉しいです」  そう言って、兄はミューとピピを追いかけて行ってしまった。  久しぶりにみっちり鍛錬している兄を見て、アクセルは少し切なくなった。  兄があんなことをしているのも、元はと言えば自分のせいなんだよな……。 「……フレイン、大丈夫かな? ちょっと追い込みすぎじゃない?」  と、バルドルが不安そうに首をかしげる。 「無理しすぎて途中で倒れなければいいけど……」 「その時は俺が責任持って助けますので、大丈夫ですよ。今は多分、何も考えられなくなるくらい身体を動かしたい気分なんだと思います」 「……そうか。ごめんね、いろいろ迷惑をかけてしまって」 「あっ……いえ、バルドル様は悪くないんで本当に気にしないでください」  とりあえず自分は兄が散らかした丸太を片付けよう……と、輪切りになった木をせっせと薪と一緒に積み上げた。  バルドルは穏やかにその様子を見守りつつ、椅子から腰を上げた。

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