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第2172話(フレイン視点)

 今回はその言いつけを全く守らないどころか、こちらに何も話さず偵察に行ったから激怒したのだ。そんなことをされたら、いざという時にアクセルの居場所がわからないし、何かあっても駆けつけられない。  それに、「山歩きに行く」などと嘘をつかれたのもショックだった。いや、弟の様子から何となく「嘘なんじゃないか」と思ってはいたけれど、結局こちらから聞き出すまで本当のことを言ってくれなかった。それもかなり悲しかった。  ――私に言うと反対されるって思ったんだろうな……。実際、反対してただろうけどさ……。  どうすればよかったのかな……などと振り返る。  嘘だと思った時点で、行き先をちゃんと問い詰めればよかった? 後ろからこっそりついて行けばよかった? それとも、嘘をつくこともできないくらい教育を徹底すればよかった?  本当に、何が正解だったのかわからない。  傍からみれば些細なすれ違いだし、結果的には無事だったんだからそんなに問題視することもなかろう、という案件なんだろうけど……。 「…………」  胸が締め付けられるように痛んできて、フレインはそっと寝室を覗いた。  アクセルのベッドにはバルドルが、フレインのベッドにはアクセルが眠っていた。「私のベッドを使いなさい」と言ったとはいえ、それで素直にフレインのベッドに入るところが何とも弟らしい。自分のベッドがあるのだから、バルドルにこっちで寝てもらえばいいのに。  ――相変わらず、よく寝てるなぁ……。  ベッド脇に寄り、そっと頬を撫でてみる。が、思った通り全く起きる気配を見せない。  昔から一度寝てしまうと朝まで起きない子で、こうして誰かが近づいてきても全然気づかないのだ。こんなんで本当に大丈夫かと心配になる一方、それだけ安心しきっている証拠だなと思うと妙な愛しさがこみ上げてくる。 「……あに、うえ……」 「……!」  アクセルが寝言を呟きながら、寝返りを打った。  はて、一体どんな夢を見ているのだろう。夢の中ではきちんと仲直りできたのだろうか。一緒に楽しく山歩きでもしているのだろうか。それとも……。

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