2174 / 2196

第2174話

 危うくそこから落ちそうになり、慌てて踏ん張ったところですぐ隣に金色の髪が見えてくる。 「兄上……!?」  何だこの状況は? 何で俺は兄上と寝ているんだ? というか、昨日は兄上のベッドで寝ていたはずなのに、いつの間にソファーに移動を……? 「……やあアクセル、おはよう」 「っ!?」  困惑していたら兄が目を覚まし、こちらの顔を覗き込んできた。  夢の中では仲直りできたのだが、現実ではまだだったので恐る恐る返事をしてみる。 「お……おはよう、ございます……」 「よく寝ていたね。お前、結局一度も起きなかったよ」 「えっ!? それってどういう……?」 「ああ、別に変なことはしてない。ソファーに移動させてもずーっと爆睡してたから、相変わらずだなと思っただけ」 「は、はあ……」  だからその「ソファーに移動させた」意図がわからないのだが。  ますます困惑していると、唐突に兄がこちらの就寝着に手をかけてきてぎょっとした。  下着ごとズボンを下ろそうとしてくるので、慌ててそれを掴んで抵抗する。 「ちょ、ちょっと兄上、何するんだよ……!」 「いや、せっかくだからこのまま一度『おはようセックス』でもしとこうかなと」 「な、何言ってん……だ、だめだって……!」  思わず大きな声を出しそうになり、ハッとして声のトーンを抑えた。 「だめだよ、こんなところで……! バルドル様が起きて来ちゃう……!」 「大丈夫だよ。バルドル様のことだから、例え気付いたとしても『仲直りしてるんだな』と思って見逃してくれるはず」 「わ、わかった……! ならせめて浴室でやろう……! さすがにここじゃ、後始末も大変だし……!」 「うーん……なんかそれは面白さ半減だな。最初から裸だと、強引に脱がせる楽しみがない」  ……何を楽しみにしているんだろう、この兄は。 「と、とにかく、ここでやるわけにはいかないんだ……! 兄上とできるのは嬉しいけど、時と場所は選びたい……! だから……!」 「……あ、そう。ならいいや。なんか興が削がれた」  パッと就寝着から手を離し、あっさりと離れて行く兄。

ともだちにシェアしよう!