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第2174話
危うくそこから落ちそうになり、慌てて踏ん張ったところですぐ隣に金色の髪が見えてくる。
「兄上……!?」
何だこの状況は? 何で俺は兄上と寝ているんだ? というか、昨日は兄上のベッドで寝ていたはずなのに、いつの間にソファーに移動を……?
「……やあアクセル、おはよう」
「っ!?」
困惑していたら兄が目を覚まし、こちらの顔を覗き込んできた。
夢の中では仲直りできたのだが、現実ではまだだったので恐る恐る返事をしてみる。
「お……おはよう、ございます……」
「よく寝ていたね。お前、結局一度も起きなかったよ」
「えっ!? それってどういう……?」
「ああ、別に変なことはしてない。ソファーに移動させてもずーっと爆睡してたから、相変わらずだなと思っただけ」
「は、はあ……」
だからその「ソファーに移動させた」意図がわからないのだが。
ますます困惑していると、唐突に兄がこちらの就寝着に手をかけてきてぎょっとした。
下着ごとズボンを下ろそうとしてくるので、慌ててそれを掴んで抵抗する。
「ちょ、ちょっと兄上、何するんだよ……!」
「いや、せっかくだからこのまま一度『おはようセックス』でもしとこうかなと」
「な、何言ってん……だ、だめだって……!」
思わず大きな声を出しそうになり、ハッとして声のトーンを抑えた。
「だめだよ、こんなところで……! バルドル様が起きて来ちゃう……!」
「大丈夫だよ。バルドル様のことだから、例え気付いたとしても『仲直りしてるんだな』と思って見逃してくれるはず」
「わ、わかった……! ならせめて浴室でやろう……! さすがにここじゃ、後始末も大変だし……!」
「うーん……なんかそれは面白さ半減だな。最初から裸だと、強引に脱がせる楽しみがない」
……何を楽しみにしているんだろう、この兄は。
「と、とにかく、ここでやるわけにはいかないんだ……! 兄上とできるのは嬉しいけど、時と場所は選びたい……! だから……!」
「……あ、そう。ならいいや。なんか興が削がれた」
パッと就寝着から手を離し、あっさりと離れて行く兄。
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