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第2175話
そして欠伸 をしながら、ふらりと洗面所に向かって行った。
――な、何だったんだ……? 機嫌はもう直ったのか……?
兄の思考がよくわからない。今のは仲直りのつもりだったんだろうか。だとしたら、断ったのはマズかっただろうか。
このままではいろんな意味で気まずいままだし……と思い、アクセルはそっと洗面所を覗き込んだ。
兄は顔を洗いつつ、爆発した金髪を櫛で梳かしていた。
「何だい? お前も洗顔したいの?」
「あ、いや……その……」
「もう少しで終わるから、ちょっと待ってね」
兄の受け答えはいつもと変わらないように見える。少なくとも昨日みたいに「あまり話しかけないで」という雰囲気ではなかった。
「うん、こんなものかな。はい、お前使っていいよ」
櫛を置いた兄だったが、後頭部の髪がまだ少し跳ねている。
「あ……ちょ、ちょっと待ってくれ」
アクセルは急いで櫛を取り、兄を捕まえて後ろから髪を梳かしてやった。
「あれ、まだ跳ねてた?」
「あ、ああ……。この辺がちょっとな」
「そうかい。後ろ側はあまり見えないから困るよ」
そう言いつつ、大人しく髪を梳かされている兄。
拒否はされなかったから、多分ある程度は話ができる状態にまで戻っているのだろう。
「兄上……その……」
ごめんなさい、と言おうとして直前で言葉を呑み込む。
そう言えば昨日は謝っても許してもらえなかった。
今なら許してもらえそうな気もするけれど、だからといって気安く「ごめんなさい」と口にしていいものかどうか。下手したらまた「謝れば済むと思ってる?」などと言われ、昨日の状態に逆戻りしてしまうかもしれない。
何を言えばいいかわからず、視線を落としてもじもじしていると、兄が鏡越しにこちらを見てきた。
「今日は昨日のことを教えてよ」
「えっ……?」
「偵察してきたんでしょ? そういえば、詳しい話を聞いてなかったなと思って。せっかく有益な情報を仕入れてきたなら、それを元に今後の方針を考えないとさ」
「あ、ああ……」
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