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第2176話
「でも、今度はちゃんと私にも相談してね。どこに行ってもいいから、嘘だけはつかないで。いざという時に居場所がわからないのが一番困るんだ。いろいろ思うところはあるけど、お前が無事なら何とかなるから……」
「…………」
「わかったね? お返事は?」
「はい、兄上……」
泣きそうになり、アクセルは目を伏せた。
どんなにアクセルがやらかしても、兄はその都度助けてくれる。そのことに甘えている自分が申し訳なかったし、迷惑をかけまくっていることもいたたまれなかった。
だけど自分の性格は今更直らないし、兄も多分そのことは承知している。
だったらせめて、何かあった時の被害は最小限に抑えたい。どんなに言いにくくても、嘘でごまかすことだけはしてはならない。
アクセルは櫛を置き、後ろから兄の頭に自分の額をぶつけた。柔らかな金髪が鼻先をくすぐり、心臓を鷲掴みにされたみたいにきゅうんとしてくる。
「……兄上、大好きです」
「うん、私も大好き。時々腹立たしくなるけど、やっぱり嫌いにはなれないからね。私がどれだけお前のことを想ってるか、それを忘れないようにするんだよ」
「はい……」
ぐすん、と鼻をすすり上げる。
許してもらえた安心感と、兄に対する罪悪感。それが一気に混ざり合ってまた泣きそうになった。
せめて今日の朝食は兄の好きなものを作ろう……と思っていると、兄が振り返ってこんなことを聞いてくる。
「ところで、『おはようセックス』は必要ない?」
「えっ!? い、いや、それは……。せっかく髪整えたばかりだし、今更やらなくてもいいかと……」
「そう? バルドル様に隠れてイチャつくのも、楽しいと思うけどな」
「と、というか、何で俺はソファーで寝てたんだ? 昨日何かあったのか?」
「いや、単に私が一緒に寝たくなったからソファーに連れてきただけ。ベッドに入ってもよかったけど、バルドル様の横で騒ぎになるのはよろしくないからね」
「騒ぎって……」
この兄は一体何をするつもりだったのだろう。本当に添い寝だけで終わったんだろうか。
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