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第2182話
これ以上兄を怒らせたら文字通り生きていけなさそうだし、しばらくは兄の言うことを聞いておとなしくしていた方がよさそうだ。
――と言っても、このまま普通の生活を送るわけにもいかないと思うんだよな……。
屋敷から出てきたホズのことを思い出す。
あの時は咄嗟にミューが止めてくれたが、自分はアレを本物のホズだと思って大事なことを口に出しかけてしまった。
ロキが罠や策を仕掛けてくる狡猾なタイプなら、こちらの行動に何かしらの違和感を覚えて対策をとってきてもおかしくない。
もちろん何をしてくるかまではわからないが、あまり悠長にしていられないのも事実だと思う。
「…………」
アクセルは朝食の食器を片付けながら、ああでもないこうでもないと考えた。
どうにかして、屋敷内部の様子を探る方法はないだろうか。もたもたしていたらロキ側がどんどん準備を整えてしまうし、ホズの身も危うくなってしまう。
でも今は屋敷を偵察するわけにはいかないし、取れる手段も限られる。
本当に、どうしたものだか……。
「お前、ちょっとバルドル様と留守番してて。私は出掛けてくるから」
兄がそんなことを言い出したので、アクセルは食器を片付けている手を止めた。
「どこに行くんだ?」
「オーディン様のところ。ダメ元で助力を乞うてみる」
「えっ? それならバルドル様も一緒に行った方がいいんじゃ」
「それも考えたけど、今回は遠慮してもらうよ。ロキとオーディン様は、ラグナロク前は義兄弟の契りを交わしていたからね。今も関係が続いているとは思えないけど、万が一ってこともあるからさ。もし怪しそうなら詳しいことを言わずに帰ってくるつもり。そもそも謁見できるかもわからないけどね」
「そ、そうか……。でも、それはそれで兄上が危険な気が……」
「大丈夫、私はお前みたいなヘマはしないよ」
そう言いつつ、兄はこちらを指さして強めに念を押してきた。
「だからお前、心配だからって勝手に家を飛び出すんじゃないよ? お前が行っていいのは市場まで。その際はバルドル様も連れて行くこと。わかった?」
「は、はい……」
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