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第2186話
「では、私は修行に向かう。弟君も、たまには修行場で汗を流すとよい。……いつ大きな戦が起きるかもわからぬからな」
「は、はい……」
店を閉め、ケイジはランニングがてら山に走っていった。相変わらず、ランニングとは思えないような全力疾走だった。
ケイジのことだから、きっと息を切らしたりはしないんだろうけど。
――ケイジ様の修行場にも、最近全然行けてないな……。たまにはみっちり鍛錬したいところだが……。
以前は修行場の上級コースにも行けるくらいにはなっていたけど、今はどうだろう。初級コースでも躓いてしまうかもしれない。丸太を抱えながら滝に打たれる修行なんか、途中で気絶してしまいそうだ。正直、あまり自信がない。
――やっぱり、死合いがないのは張り合いがないんだな……。庭での鍛錬だけじゃ限度があるし……。
一度、バルドルを含めた三人でケイジの修行場を訪れてみようか。
いつロキのところに突撃してもいいように、身体の調子は整えておきたい。狂戦士モードがどれくらい長続きするのかも確認したいし、兄が帰ってきたら相談してみよう。
その後はバルドルとミルクや卵を買い、野菜も多めに購入して家に戻った。
店の前で品定めする度に、
「あれ? アクセルさん、今日はフレイン様以外の人とデートなんですね」
……みたいなことを言われ、いちいち否定する羽目になった。だからデートじゃないし。
「ごめんね、なんか勘違いさせてしまったみたいで」
キッチンに買ってきた食材を並べつつ、バルドルが言う。
「やっぱり私、あまり外に出ない方がいいのかな。私がいると迷惑ばかりかけちゃう」
「ああいえ、そんなことはないですよ。バルドル様は気にしないでください」
「だけど、変な噂が立ったらフレインに怒られない?」
「だ、大丈夫ですよ。いくら兄でも、バルドル様が相手なら誤解することはないでしょう。心配無用です」
そういってアクセルは、食材を全部食料庫に突っ込んだ。そして立ち上がった。
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