2187 / 2195
第2187話
「それよりバルドル様。俺、庭で丸太切りの練習したいです。ちょっと丸太飛ばしてもらえませんか?」
「うん、いいよ。魔力もだいぶ回復したから、昨日よりいっぱい飛ばせると思う」
早速アクセルは庭に出て、昨日兄が輪切りにした丸太を集めてきた。棒状の丸太をこれ以上切っても仕方ないので、今回は切られた丸太を障害物代わりに飛ばしてもらおう。
軽く準備運動をして両手の小太刀を軽く振り、バルドルに術の使用をお願いする。
まずバルドルは丸太を三つ浮かせ、それを順番にヒュンヒュンと飛ばしてきた。
「……ハッ!」
素早く小太刀を振るい、飛んできた木材を斬りつける。
確実な手応えを感じ、三つともスパッと切ることができた。
――よし、これくらいなら楽勝だな。もう少し増やしてもらうか。
今度は一気に一〇個飛ばしてもらうことにする。
バルドルは少し困惑していたが、アクセルは構わず小太刀を構え直した。
「ええと……じゃあ行くよ?」
ヒュン、とバルドルが一〇個の木材を飛ばしてきた。
最初の五個くらいは動体視力を駆使して切り落とせたが、残り五個は身体が追いつかず、結局切り損ねて自分自身で受ける羽目になった。
「いっ……!」
丸太のひとつが思いっきり額に当たり、一瞬くらっとめまいがする。
「ああ、ごめんね。大丈夫かい?」
「だ、大丈夫です……俺が未熟だっただけなので……」
「やっぱり、いきなりステップアップは無謀だよ。少しずつ増やしていった方がいいって」
「いや……でもこれ、狂戦士状態だったら全部切れたような気がするんですよね。次は狂戦士になってやってみますから、また同じように……」
「何してるんだい?」
ちょうどそこに、兄・フレインが帰ってきた。
アクセルは痛む額を押さえながら、庭に入ってきた兄を出迎えた。
「兄上、おかえり。今バルドル様と特訓してたんだ」
「それは見ればわかるけど。……で、お前は何をしてたの?」
「何って、丸太を切ってたんだよ」
「切ってたって、これが?」
「えっ?」
兄が地面に落ちた木材をひとつ拾い上げる。
ともだちにシェアしよう!