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第2188話

 輪切りにされた丸太は、端のところが少し欠けており、到底スパッと切れている状態とは言い難かった。真ん中から真っ二つに切っていたつもりだったのに、太刀筋も狙いもズレまくっているではないか。 「ええ? 何だこれ? ちゃんと切ったはずなのに、どうして……」 「どうもこうも、しばらく鍛錬してなかったから腕が落ちてるんでしょ。お前は基本的な素振りからやり直した方がいい。ブレブレの太刀筋を早く元に戻しなさい」 「は、はい……すみません」 「はあ……これはきっと、狂戦士モードの継続時間も短くなってるよ。私たちも、調子を取り戻す期間を設けるべきだね」  そう言って、兄はやれやれと溜息をついた。 「それはそうとフレイン、オーディン(父上)には会えたのかい?」  バルドルが話題を変えてくる。それについては、アクセルも気になっていた。  兄は、曖昧な顔で答えた。 「直接お会いすることはできませんでしたね。オーディン様も今は、魔力が枯渇して大変だそうで。回復に努めているという話でした」 「そう、か……そうだよね……」 「ですが、思考(フギン)記憶(ムニン)には会えましたよ。事情を説明したら、オーディン様に話を通してくれて」  と、懐から小さな方位磁石のようなものを取り出す。 「これを貸してくださったんです。どう使えばいいか、私にはわからないですけど」 「あ。これって、自分の近くに罠があるかどうかわかる魔法具じゃないかな」  バルドルが方位磁石を手に取り、まじまじと眺める。 「そうか……。父上はこれで、屋敷を探索してこいって言ってるんだね。大事になる前に、ロキを何とかしてこいと」 「そういうことなんでしょうね。それは理解できるんですが……でも、ロキを何とかしたいならヴァルキリーたちに話をする方が手っ取り早いのでは? 今は屋敷の警備中で、ロキに一番近いところにいるでしょう。プライドが高い彼女たちもオーディン様の言うことなら素直に聞くでしょうし、何故そうしないんでしょうか」

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