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第2190話
「あ、うん……いいけど、なんかちょっと怖いな。一体どんな修行場なんだろう」
アクセルは急いで出掛ける準備をし、軽食やタオルを持って三人で山に入った。
ケイジの修行場は比較的麓にある初級コース、更にその奥にある上級コースとで分かれている。
初級コースには下半身強化のための巨大な丸太と、冷たい水が流れ落ちる滝があった。
――うう……やっぱり冷たい……。
滝壺に少し手を入れてみたのだが、案の定凍えそうなほど冷たかった。この冷水が上から勢いよく落ちてくると、全身を刺されているように感じる。初めて丸太を担いで滝に打たれた時なんかは、あまりの辛さにいつの間にか気絶してしまったものだ。
今日はそんなことにならないといいが……。
「よいしょ、っと」
兄はさっさと丸太を担ぎ、ジャブジャブと水の中に入っていった。
そしてそのまま流れ落ちる滝の下に居座り、スクワット状態で水に打たれ始めた。
「うわぁ……すごいなぁ。強い戦士はみんなあんなことしてるの?」
見学に来たバルドルも、やや引き攣った顔で兄を見ていた。温度を確かめるように水に手を入れ、ぶるりと震えて手を引っ込める。
「というか、この冷たさは異常だよ。ほとんど氷水だもん。もう少し温かくしようか?」
「いえ、これでいいんです。修行場の滝行は、これくらい冷たくないと意味がありません」
「そ、そう……? でも風邪ひいちゃわない……?」
「狂戦士モードになっていれば、冷たさは感じません。これはどれくらい狂戦士モードを継続できるかの確認でもあるんです。心配には及びませんよ」
ああ、そうか。兄は今狂戦士モードになっているのか。それなら痛みや冷たさは感じないから、丸太のスクワットだけで済むのかもしれない。
もっとも、狂戦士モードが解除されたらその時点で気絶してしまうだろうが。
――よし、じゃあ俺も……。
アクセルも手近にあった丸太を担ぎ、気合いを入れて狂戦士モードに突入した。
そして水の中に入り、兄の隣に居座る。
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