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第2191話

「俺もやる。どっちがより長く続けられるか、勝負だな」 「おや、挑戦状かい? いいね、そういうのも久しぶりだ。まだまだお前には負けないよ」  にこりと微笑むと、兄は再び前を向いて滝に打たれた。アクセルも負けじと滝の水圧に耐え続けた。 「え、ええと……二人共、無理しないようにね?」  見守っているバルドルはだいぶ引いているみたいだが、これが戦士の修業だ。気にしてはいられない。  そうして何分か滝に打たれていたのだが、しばらくして急に身体が重くなってきた。  ――う……キツくなってきた……。  冷たさは感じていないから、狂戦士モードは途切れていないはずだ。  ならばこれは、丸太と滝の重みが身体に蓄積してきた証拠だろう。痛みや冷たさは感じなくても、身体へのダメージはそのまま残るのだ。  先程から膝もぷるぷる震えているし、全身が硬くなって動けない。指先の感覚もなくなってきた。  あ、これヤバい……倒れそう……。 「……あっ……」  とうとうバランスを崩し、バシャーンと冷水の中に転倒してしまう。  転んだ拍子に丸太の下敷きになり、そのままぶくぶく水の中に沈んでしまった。  上手く身体を動かせず、動揺して水を飲み込んでしまい、更にパニックになって狂戦士モードすら解除されてしまう。  途端、全身に刺さるような冷たさが襲い掛かってきて、アクセルはいよいよ頭が真っ白になった。  ――あ、兄上、助けて……!  心の中で悲鳴を上げた瞬間、丸太がどこかへ吹っ飛ばされガッと服を掴まれて水面に引き上げられる。  思った通り兄が手を貸してくれていて、アクセルは咳き込みながら兄にしがみついた。 「げほっ、げほっ……! はぁ……はぁ……!」 「大丈夫かい? 無理するからだよ」 「す、すまな……ごほっ! げほっ……はぁ……」 「まったく、本当に手の掛かる子なんだから……。お前はもう休んでいなさい。修行場で死んだら本末転倒だからね」 「は、はひ……ごほっ」  よろよろと水から上がり、ガタガタ震えながら着ていた服を脱ぐ。

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