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第2205話

「一応、私のステルス魔法で気配を消してるからね。侵入するだけなら気付かれないんじゃないかな。もっとも、ロキはそれも折り込み済みだと思うけど」 「ですよね……」  頭の足りないヴァルキリーたちはともかく、ロキが裏口からの侵入を想定していないとは考えにくい。ここから先は罠がわんさか仕掛けられていることだろう。 「おっと、いきなり怪しさ満点のテーブルセットだな」  ジークが食堂テーブルの上を示す。  そこには皿や食器がセットされており、いつでも食事ができる準備が整っていた。何なら真ん中の食器にはボウル型のスープ皿が用意されており、ご丁寧に「どうぞ召し上がれ」なんてテーブルカードが置かれている。 「う……気味が悪いですね。ロキは一体何を考えているんでしょう」 「……わからない。私たちの侵入を阻むでもなし、すぐさま罠にかけるでもなし、本当にどういうつもりなんだろう……」 「いずれにせよ、食堂には用はないです。こんな怪しい場所、さっさと抜けましょう」  ドアを開け、次の場所に進もうとする。  だがドアノブに手をかけたが、ガチャガチャ音が鳴るだけで全く開く気配がなかった。押しても引いても、何ならスライドさせようとしてもダメだった。 「あの、開かないんですけど……? 食堂って鍵ありましたっけ?」 「いや、ないよ。だからドアが開かないなんてことはまずない」 「え、じゃあ……」 「その前に、ちょっと下がってな」  ジークが愛用の槍を構え、こちらに退避を促してくる。  意図を察し、バルドルと一緒になるべくジークから離れて彼の様子を見守った。 「ゥオオオオッ!」  ジークが力を解放し、ドアを真っ直ぐ突き刺そうとする。  普通のドアならこの時点で木っ端微塵になるところだったが、ガキン、と大きな衝撃音がして槍が弾き返されてしまった。 「あー、やっぱダメか。なかなかに強力な魔法がかかってるな」  と、ジークがやれやれと肩を竦める。 「この魔法を解かないと、先には進めなさそうだぜ」

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