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第2206話
「ということは、この怪しさ満点の食事は……」
アクセルは食堂テーブルの上を見つめた。
相変わらずテーブルの上にはスープが置いてあり、「どうぞ召し上がれ」のカードもある。
恐る恐るテーブルに近づき、スープ皿の蓋を取ってみた。スープはちょうどいい具合に温まっており、美味しそうな匂いが立ち上ってくる。これは玉ねぎスープだろうか。
「え、ええと……これどうしましょう……?」
「どうするも何も、さすがに飲むわけにはいかんだろ。明らかに毒入ってそうだし」
「でも、誰かが飲まないと罠は解除されないのでは……」
「……お前さん、まさか『飲んでもいい』とか思ってるんじゃないだろうな? そういうところだぞ、フレインが心配してるのは」
ジークにじっとりした目を向けられ、思わずギクッとした。
確かに、「このままじゃ埒が明かないし、イチかバチか飲んでみてもいいかも」と思わんでもなかったのだ。もし毒を受けたとしても、バルドルが魔法で治してくれるだろうし。
「ま、まあ……まず毒があるかどうか確認しようね。厨房に銀食器があったはずだから、それ持ってきて」
言われた通り、アクセルは急いで厨房から銀製のスプーンを取ってきた。
古来から、毒を見破るにはまず銀製の食器を……というのは常識である。もちろんそれでは見破れない毒もあるけど、初手の調査としては王道だ。
「ありがとう。それじゃあこれを……」
バルドルが玉ねぎスープの中に、そっと銀のスプーンを浸す。
そのまましばらく待ってみたが、大きな変化は見られなかった。
……毒は入っていないということだろうか。
「何も起きませんね。特に問題はないんでしょうか?」
「銀に反応するような毒は入ってないってことだろ。これで安全だと判断するのは危険だぜ」
「そうですけど、一口くらいなら……」
「あのな、俺はフレインから『弟をよろしくね』って言われてるんだ。お前さんにもしものことがあったら、俺は滅多切りにされちまう。だから一〇〇パーセント安全だって言い切れるまで、下手なことはできないんだよ」
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