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第2207話
「……!」
ハッとしてアクセルは窓の外を見た。
ここからだと角度があってよく見えないが、食堂の外――正門付近では、兄とミュー、それにユーベルが雄々しく暴れ回っていた。
一人で二人以上を相手にしているようで、兄の白い衣装がところどころ血に汚れている。
そんな状況でも一歩も引かず、凄まじい殺気を放ちながらヴァルキリーたちを相手していた。
――兄上……。
ズキンと身体の中心が疼いてくる。戦いたい欲求がふつふつと湧いてくる。
自分もあの中に混じりたかった。兄と一緒に武器を振るいたかった。
屋敷内の探索でも罠にかかって死ぬ可能性があるんだし、どうせなら兄上の隣で戦って死にたかったな……。
「おいコラ、余計なこと考えるな」
「いてっ……」
パカン、とジークに頭をはたかれ、アクセルは目の前の現実に引き戻された。
ジークが呆れ顔で説教してくる。
「ったくお前さんは……ちょっと気を抜くと、すぐ頭の中がフレインのことでいっぱいになる。少しはシャキッとしろよ。そんなことじゃ生きて帰れないぜ?」
「す、すみません……」
「で、この怪しい玉ねぎスープをどうするかって話だが、『召し上がれ』って書いてある以上、誰かに飲ませないといけないわけだ。どうしたもんかね」
「どうと言われても……」
だから自分が一口飲みましょうか……と言いかけたのだが、またジークに怒られそうだったのでやめておいた。
――でも、銀が反応しない程度の毒だしな……。それなら量も少ないはずだから、一口くらい飲んでも平気な気がするが……。
チラリとバルドルの様子を窺う。
バルドルも「どうしたものか」と考えているらしく、しきりに首を捻っていた。
はて、「罠を解除する魔法」みたいなものは使えないんだろうか。罠を発見する魔法具があるのなら、そういう魔法もありそうなものだが。
「……あ、そうだ」
唐突にバルドルが厨房に引き返していく。
何をするのかとバルドルを追いかけたら、彼は厨房の四隅に仕掛けてあったネズミ捕りを手に取った。
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