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第2208話

「……? バルドル様、そんなの何に使うんですか?」 「この中にスープを入れておこうかと思って。それで誘き出されたネズミくんに、スープを飲んでもらうの」 「え……そ、そんなやり方で……? いいんですかね、それで……」 「ごめんね、他にいい方法が思いつかなくて。何かアイデアがあったら教えて欲しいな」 「えっと、それは……」  残念だがアイデアはない。他の誰かにスープを飲ませるわけにはいかないし、消去法でネズミに犠牲になってもらうしかなさそうだ。  ――ちょっと可哀想な気もするけどな……。ここに至ってはやむを得ないか……。  仕方なくアクセルは、厨房に残っていたネズミ捕りを全部回収し、例のスープを中にセットした。  そして食堂の四隅に仕掛け直し、ネズミが引っ掛かるのを待った。 「あっ……」  隠れたまま様子を窺っていたら、どこからともなくネズミがやってきた。  そのネズミは周囲を見回し、いそいそとネズミ捕りの中に入ると、すんすんとスープの匂いを嗅いで、そのまま普通に飲み始めた。  それと同時に食堂の扉からカチッと音がして、魔法が解除された気配がした。  ジークがドアノブに手をかけ、扉を押す。 「よし、開いたな。先に進むぞ」  ジークに続いて食堂を出ようとした時、ふと気が付いてアクセルは背後を振り返った。  ネズミ捕りのネズミは、未だにスープを飲み続けている。 「ネズミ、普通にピンピンしてますね……。もしかして、本当に毒なんて入ってなかったり……?」 「だからって油断するのはご法度だ。たまたま毒が入ってなかっただけかもしれん。これからも用心してくれ」  ジークに釘を刺されつつ、今度こそ食堂を後にした。  アクセルたちが出て行った数分後に時間差でネズミが死んだのだが、アクセルがそれに気づくことはなかった。  次の部屋は書庫だった。比較的広い部屋にいくつもの本棚があり、そこに色とりどりの本が並べられている。  だが巻数がバラバラになっていたり、出しっぱなしのまま片付けられていない本もあったりして、整理整頓されているとは言い難かった。

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