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第2209話

「……随分散らかっていますね。こういうのを見ると、片付けたくなります」 「アクセルは掃除得意だもんね。じゃあロキを追い出せたら、屋敷の大掃除を手伝ってもらおうかな」  と、バルドルが気休めらしきことを言ってくれる。  バルドル自身もホズが心配で気が気じゃないだろうに、こうしていつもの態度のままでいてくれるのは地味にありがたかった。 「で、ここでは何をしろと?」  ジークが書庫を見回し、腰に手を当てる。 「また妙な謎解きをやらされるのなら、割とうんざりなんだがな」 「ええ……。というか、こうしてひとつひとつ罠を解いていったところで、ロキが出てくるとは限らないんですよね。ホズ様の居場所もわかりませんし、いいように踊らされているだけみたいでシャクです」 「結局、ロキは何がしたいんだろうな? その気になれば俺たちを始末するのも難しくないだろうに、試すようなことばかりしてる。全く考えが読めんぜ」  そうジークが嘆いたら、バルドルが小さく息を吐いた。 「うーん……私に復讐したいのは確かなんだろうけど、そのことで頭がいっぱいになって、そもそも自分が何をしたかったのかわからなくなっている可能性もあるね」 「わからなくなっている、ですか?」 「アクセルも経験ない? 大きな目的があったはずなのに、目先のことに気を取られて本来の目的を忘れちゃうこと。特に復讐なんかはその典型だよ。相手を貶めることばかり考えて、その先のことは何も考えていない。私への復讐が成功したからって、自分の立場が変わるわけじゃないのにね。復讐を否定はしないけど、その先に何もないんじゃ達成したところで虚しいだけだよ」 「そう、かもしれません……」  アクセルは正直、「復讐は何も生み出さない」などという綺麗なお説教は嫌いだ。  そんな綺麗事は大切な者を失くしたことがないから言えるのであって、怒りや悲しみ、憎しみに囚われている人には何も響かない。「お前に何がわかる」と逆ギレされるだけである。  ただ、ひとつ言えるのは「復讐のことを考えている間は目が曇りやすい」ということだ。

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