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第2210話
あるゴールに向かって冷静に作戦を組み立て、その過程で苛烈な手段をとっているのなら得る物もあろうが、大抵の場合は目の前の事象に囚われて、本来の目的がおざなりになってしまう。
アクセルの場合も、生前兄が亡くなった怒りと悲しみで「敵をたくさん倒せばヴァルハラに行ける」と思い込み、後先考えず敵兵を屠りまくった。
それで運よくヴァルハラに来られたからよかったものの、今振り返ればあの頃の自分はだいぶ頭がおかしかった気がする。そもそも記憶がほとんどなく、何をしていたかハッキリ認識していないのも大問題だ。
これはもう目が曇っている・いない以前の話であり、真っ当な人間として活動していたかどうかも怪しい。
そういった危険性があるから、「復讐なんかやめておけ」と言われがちなのだろう。
――ロキも、誰かに自分を止めて欲しいのかもな……。
自分ではもう止められないし、引き返せないところまで来ているけれど、誰かが強引に止めてくれるならそれもまたヨシ……と。
もちろんロキ本人はそんな心情に気付いていないだろうが、アクセルにはそう思えてならなかった。
「まあ、『かまってもらいたい』って心理は透けて見えるわな」
ジークが壁に貼ってあった一枚の紙を眺める。
一番奥の本棚の横に貼られてある紙には、シンプルに一言こんなことが書かれていた。
「『私のところまで来い』……って、これロキからのメッセージですか?」
「そういうことだろ。いろんな罠を仕掛けながら、俺たちが悪戦苦闘しているのをどこかで眺めて楽しんでるんだ」
「…………」
「そんな遊びに付き合ってやる義理はねぇな。さっさとロキをとっちめに行くぞ」
「しかし、何をどうすればいいんだろうね?」
バルドルが廊下に続く扉のノブをガチャガチャ回している。
「また鍵がかかってるし……何かしないと先には進めなさそうだ……」
「しょうがない。手分けしてこの部屋を探索しますか。何か気になるものを見つけたら、すぐに声をかけてください」
ジークとバルドルがそれぞれ書庫を調べ始めたので、アクセルも二人から離れて違う場所を調べてみることにした。
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