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第2212話

「それにしても、戦士(エインヘリヤル)は強いね。お腹に剣が刺さったくらいじゃ、ほとんど取り乱さないのか」  バルドルが感心したように言うので、アクセルは苦笑しながら答えた。 「まあ怪我するのは慣れてますし。死合いでは四肢が欠損することもありますからね、短剣が刺さったくらいで泣き喚いてはいられません」 「でも痛くない?」 「そりゃあ痛いです。だからその痛みに負けないように、日々鍛錬しているんですよ。それに、万が一怪我をしてもバルドル様がすぐに治してくれますから、そんなに慌てることではないですね」 「そ、そっか……。とはいえ、怪我をしないに越したことはないよ。これからは気をつけて」 「あ、はい……わかりました」  アクセルは小さく頷いた。  気をつけようがない罠もあるが……ああいう、あからさまに「おかしいな」と思うものにはなるべく手を触れず、すぐ仲間に声をかけるべきなのだろう。 「ところでバルドル様、この本前から持ってましたっけ?」  問題の怪しい絵本を見せたら、バルドルは訝しげに首をかしげた。 「いや、多分これ私のじゃないな……。幼い頃は絵本も読んだけど、少なくともこれは見覚えがない」 「やっぱり……。この本を開いた途端、腹に剣が刺さったんですよ。何なんですかね、この絵本は」 「つまり、そいつをどうにかするしかないってことだろ」  ジークがふむ、と顎に手を当てる。 「しかし絵本関連の罠なんて、どうすりゃいいか全く思いつかないな。バルドル様、何かご存じですか?」 「うーん……絵本の中に対象を閉じ込めるとか、絵本通りのことを実行するとか、そういう話は聞いたことがあるけど、これだけじゃ何とも……。他に怪しい本はなかった?」 「あ、もしかしたら……」  アクセルは絵本があった近くの本棚も調べてみた。  その結果、怪しい絵本と同じ大きさの本があと三冊見つかった。「泣ける魔法の絵本」、「ムカつく魔法の絵本」、「驚きの魔法の絵本」の三種類だ。  もちろん、それを本棚から取り出す時は細心の注意を払った。

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