2214 / 2296
第2214話
「あれ……?」
階段を上がった先に到着したのだが、見てすぐに違和感に気付いた。
ひたすら長い廊下が数十メートル続いており、壁沿いにはドアらしきものがひとつもない。廊下の奥にポツンと扉があるだけだ。
アクセルは念のため、バルドルに聞いてみた。
「あの……二階ってこんな構造でしたっけ?」
「全然違うよ。二階にはお客様用の寝室や倉庫があるんだ。こんな廊下だけの空間はおかしい」
「てことは、早速罠が仕掛けられているってことですね……。気をつけて進まないと」
この手の長い廊下にありがちなのは、どこからかナイフが飛んでくるとか、壁が急に狭まるとか、そういったトラップだ。
多分一定の距離を進むと発動する仕掛けになっているから、本来は罠に引っ掛かる前に素早く駆け抜けるのが一番だと思われる。
――でも今回は、俺一人だけ駆け抜ければいいわけじゃないからな……。
ジークは心配いらないが、バルドルは走れるんだろうか。彼は魔法に特化した神様だから、戦士 のように速く走れない気がする。
仕方なく、一歩一歩慎重に廊下の奥を目指していると、
「っ……!?」
数歩進んだところで、ぞわっと嫌な気配を覚えた。アクセルは咄嗟に身体を捻った。
間髪入れずヒュン、と何かが風を切り、反対側の壁に突き刺さる。
「こ、これは……」
飛んできたのはボウガンの矢だった。壁に突き刺さった威力からして、かなり強力なものなのだろう。しかも自分の首くらいの高さに刺さっており、うっかり当たっていたら頸椎を刺し貫かれて即死していたと思われる。
「……容赦ないですね。俺たちを殺す気満々ってことですか」
「そうだな。まったく、油断も隙もありゃしないぜ」
ジークはやや呆れながらも、自分の槍を構えた。
そしてそれをプロペラのように高速回転させると、そのまま悠々と廊下を進み始めた。
えっ、と思って見ていたのだが、ジークは涼しい顔で飛んでくるボウガンを次々に弾き飛ばしている。
ともだちにシェアしよう!

