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第2215話

「……ジーク様、そんなのアリですか」 「どこから飛んでくるかわからない矢を見極めて避けるより、こっちの方が確実で手っ取り早いだろ?」  ……それはそうかもしれない。 「ほれ、弟くんも手伝いな。ずっと回転させてるのも疲れるからさ」 「は、はい」  アクセルも小太刀を抜き、ジークの後ろからぶんぶん振り回しながら前に進んだ。  ジークが弾き洩らしたボウガンを確実に叩き落とし、安全な道を作っていく。  ようやく扉の前まで来たが、全員傷はついておらず、最後尾を歩いていたバルドルも無傷だった。よかった。 「ありがとう……。二人共、すごいね。さすが戦士(エインヘリヤル)だ」 「いえ、バルドル様こそ怪我がなくて何よりです」 「んじゃ、先に進むぞ。くれぐれも気を抜くなよ」  扉を開けて、二階の室内に入る。  だがそこに広がっていたのは、どこかの庭園みたいな場所だった。  小綺麗な庭園の真ん中に大樹がドーンと聳え立っており、その周りにはいくつかの花が咲いている。  ここが普通の観光地なら、ゆっくり歩き回って草花を観賞するところだが、残念ながらここはバルドルの屋敷内だ。こんなところに庭園が広がっていること自体、おかしい。 「はぁ……? なんですか、ここは。どうして屋敷の中にこんな場所が」 「……空間を繋げる魔法かな? 言うまでもなく罠だけど、ロキも亜空切断っぽいことができるんだね」 「え? それって……」 「お気に入りの庭園と、私の屋敷を繋げたのかも。ロキの考えはわからないけど、この庭園自体は綺麗なものだね」  アクセルは改めて庭園を眺めた。  天まで伸びていそうな大樹は大人が数十人で囲めるくらいの太さがあり、周りには神秘的な白い花、華やかな赤い花、上品な青い花がある。  大樹の前には銀色の泉が広がっており、水面が鏡のように光っていた。大樹がそこに映って逆さまに見えている。 「はあ……なるほどね……」  バルドルが泉の傍らで水面を覗き込んでいる。 「? バルドル様、どうかしました?」

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